<前編のあらすじ>

自営業の信二さんと妻の幸恵さんはともに59歳です。まもなく60歳を迎えるにあたって将来の年金について考え始めました。

インターネットで情報を調べたところ、年金が「1カ月納付で年額1700円増える」計算であることを知ります。若い頃に未納期間があった信二さんと全額免除の期間があった幸恵さんは、60歳から5年間、国民年金に任意加入することを検討し始めました。

ところが年金事務所で相談した結果、任意加入で保険料を5年間支払うと、同額程度を年金として回収するのに信二さんは10年、幸恵さんは15年かかることが判明します。

●前編:【年金】60歳からいくら増やせる? 保険料を納めていなかった夫婦が検討する「受給額アップの方法」

60歳時点で納付+免除で40年ある場合は注意

払った保険料と年金額の累計額が同額になるためには、幸恵さんの場合15年もかかるというのは、幸恵さんの加入記録・納付実績が原因です。

20歳から60歳になるまでの40年(480月)のうち、保険料納付済期間と保険料免除期間が両方含まれ、その合計で480月ある人が60歳以降任意加入した場合、480月ない場合と増え方が異なっています。

幸恵さんはかつて96月分の保険料の全額免除を受けていました。このまま60歳を迎えると、60歳時点で保険料納付済期間が384月、保険料免除期間が96月となり、両者の合計で480月ある人になります。これだけでは何のことか幸恵さんもさっぱり理解できません。

実は、免除を受けている場合、未納の場合よりも元々多く年金が計算されていました。老齢基礎年金の額は、保険料負担分だけでなく国庫負担分(税金の負担)も含まれて計算されることになっています。幸恵さんの保険料免除期間は全て平成21年3月以前の全額免除期間でしたが、その期間中、たとえ全く保険料を納めていなくても、納付した場合の3分の1の額が国庫負担分として年金額に反映されていることになっています。未納の場合、国庫負担はありません。

480月全て保険料納付済期間の場合は81万6000円×480月/480月=81万6000円の満額で計算されることになりますが、保険料全額免除期間96月、残り384月が保険料納付済期間の幸恵さんの場合、81万6000円×(384月+96月×1/3)/480月で計算され、70万7200円となります。

96月分がもし未納だった場合は、81万6000円×384月/480月=65万2800円になっていたところです。免除申請により、96月分は0円とならず、5万4400円多く計算されることになります。