<前編のあらすじ>

浩司さん(仮名)は11月で64歳になり、58歳の妻の早苗さん(仮名)と2人で暮らしています。

浩司さんは19歳になる頃から同じ会社に40年以上勤務し続けていましたが、63歳の頃に会社が倒産して失業してしまいます。その後は失業給付を受けながら再就職を目指していましたが、うまくいかず単発のアルバイトでわずかな収入を得ていました。その様子を見た早苗さんはパートを始めて家計を支え始めます。

浩司さんは特別支給の老齢厚生年金(特老厚)が64歳から受給できるようになるものの、過去の「ねんきん定期便」に記載されていた見込額に不安を感じ、老齢基礎年金の繰上げ受給を検討し始めます。ところが年金事務所での相談の結果、特例により通常より多い年金が受け取れることが判明しました。

●前編:【60代男性が会社の倒産で失業、年金額も厳しく家計の危機に…夫婦の老後不安を解決した「驚きの事実」とは】

浩司さんが通常より多く年金を受けられる理由とは?

年金事務所の担当職員が浩司さんに説明したところによると、「浩司さんは19歳の時に就職して63歳まで44年以上会社に勤務していました。厚生年金の加入期間が528月以上ある場合は『長期特例』と言いまして通常より年金は多く受け取れます」とのことでした。

浩司さんが見た「ねんきん定期便」では、まだ528月を満たしていない状態で長期特例は不該当でしたが、64歳時点では既に528月を満たして長期特例の年金が支給されることになります。浩司さんは今まで聞いたことがない話だったので、驚きます。

続けて職員は「具体的には、浩司さんの世代の方は本来、特老厚は報酬比例部分しか受け取れませんが、この特例によって定額部分が受けられ、浩司さんの場合は年下の配偶者さまがいますから加給年金も加算されます」と言い、その年金額については「現在の年金加入記録、今年度の額で、報酬比例部分は150万円ちょっとですが、これに加わる定額部分は81万6000円、加給年金は40万8100円、合計すると272万円程度となります」と説明します。長期特例は特老厚のみにある制度のため、64歳から65歳までの1年間がこの特例の対象となります。

65歳からの年金については、こちらにも早苗さんが65歳になるまで(浩司さんが71歳になる頃)加給年金が加算されます。加給年金は元々「ねんきん定期便」には記載されていない年金ですが、その間は引き続き長期特例と同じく272万円程度支給されることになっています。

浩司さんは「65歳までの1年間の年金が特例で多いだけでなく、65歳以降の年金も『ねんきん定期便』より多いのですね。それは知らなかった!」「これなら何とかなるかも」と安堵します。