<前編のあらすじ>
高田さんの父、昭三さんは事故で妻を亡くして以来、男手一つで息子を育ててきた。高田さんは昭三さんの苦労を見て育ち、親孝行な息子に成長。27歳で結婚した後は、昭三さんと同居しながら、妻と子供と4人で幸せな生活を送っていた。
ある時、メディアで遺言書の重要性を知った昭三さんは、遺言書の作成を考え始めるが、「文章を書くのが苦手」という理由でハードルの高さを感じていた。それを聞いた高田さんは、父親の負担を少しでも減らそうと気遣い、代筆を提案。以前、行政書士の筆者に遺言書の作成を依頼した時の内容を元に、自分でも代筆できると考えたのだった。
この時高田さんが代筆した遺言書の内容は「高田さんに7割、弟の誠二さんに3割を相続させる」というもの。しかし、これこそが後に相続の落とし穴にはまるきっかけとなってしまうのだった。
●前編:【「代わりに書くよ」男手一つで育ててくれた父に親孝行を…家族思いの男性が終活の手伝いでやってしまった「思いがけないミス」】
父親の死後、次男が疑問視した“ある問題”
遺言書が作成された後、時は流れて数年、81歳で父昭三さんが亡くなった。問題はそこで発生した。遺言書を読んだ弟の誠二さんが遺言書の存在に異を唱えたのだ。
「これは親父の字じゃないぞ。兄貴の字じゃないか」
誠二さんから見れば、父親である昭三さんの遺言書が兄である高田さんの字で書かれている。疑問視するもの無理はない。
そこで冷静に高田さんが説明する。
「お前は知らないかもしれないけど、これは俺が代筆したんだ。以前行政書士の人に相談した話をしただろ? その時の内容で俺が書いた」
それに対して弟の誠二さんは疑問に思ったようで、後日法律の無料相談で専門家へ相談して、高田さんに対して「その遺言書は無効だ」と主張をしだした。おかげで兄弟間で意見が対立し、遺産分割はまったく進まない。
3カ月ほど平行線の対話が続き、困り果てた高田さんは「遺言書についてどうすればいいんですか⁉」と私の事務所へ駆け込んできた。私は高田さんへ順を追って説明していった。