高田さんが代筆した遺言書は「無効」

遺言書は手書きでも作成できる。いわゆる自筆証書遺言なるタイプの遺言書で、最もポピュラーかつ手軽な方式だ。日本の遺言書のほとんどがこの方式で作られているといっても過言ではない。

自筆証書遺言の作成には特に決まったフォーマットもない。縦書きだろうが横書きだろうが、便せんだろうが単なるコピー用紙だろうが、どんな紙にどんな書き方でも問題ない。法律的な書き方・言い回しが必要となったり、専用の紙が必要になったりするようなことはないのだ。

だが、遺言書として法的効果を持たせるたには最低限の方式は守る必要がある。その1つが「全文を本人が自署すること」だ。要はすべてを手書きで書け。そういうことだ。

その点で言えば、今回の昭三さんの遺言書を実際に書いたのは高田さんだ。私は高田さんへ対し「遺言書としては無効です」とはっきり伝えた。遺言書には自筆証書遺言以外の種類もあるが、その他の遺言は公証役場が絡むことから今更別の遺言書へ、ということはできない。

高田さんは私の説明を聞き納得してくれた。そして同時に疑問を口にする。なぜ世の中では行政書士事務所などで遺言書の作成の代理業務があるのか? と。それについては「あくまでも私たちが作るのは案や下書きの作成まで。最終的な本物は本人に作成いただく必要がある」と説明を行った。