一般的に遺言書と言えば、遺言を残したいと願う本人が自分自身で書いて作成するものである。だが、中には手書きが苦手であったり病気であったりすることを理由に自署を拒否して、子や配偶者など近しい親族に代筆をお願いするケースもあるようだ。また、時には家族の方から代筆を願い出て、それが争いの原因となることもある。今回は代筆を自ら願い出た心優しき青年、高田さんの話を紹介しよう。

父親に男手一つで育てられ、孝行息子に成長した高田さん

高田さんは今年で45歳になる。父親である昭三さんは今年で73歳。早くに事故で妻を亡くし、高田さんが7歳のころから男手一つで育児と仕事をこなしてきた。

当時はまだ今ほど男性の育児に理解のあった時代ではなかったが、昭三さんは決して育児と仕事の両立のつらさを漏らすことがなかった。高田さんもその背中を見て何も感じなかったわけではない。

そのかいあってか高田さんは近所でも評判の孝行息子に成長。27歳のころに結婚してからは、父親を含め妻と子供と4人で生活を始め、親孝行をしながら幸せな日々を送っていた。

そんな高田さんの父親思いの行動が人生で初めて裏目に出ることとなったのが、昭三さんの遺言書についてだった。