まさかの「繰下げができない」という衝撃の事実

年金事務所の窓口で、晃彦さんは担当職員に「年金について何も分かっていないので教えてください」と言います。

これに対して、職員も晃彦さんには64歳から65歳までの特別支給の老齢厚生年金(特老厚)と65歳以降の老齢基礎年金、老齢厚生年金があることを伝え、年金制度そのものについて解説を始めました。

改めて「既に届いている年金請求書は放置していたけど、64歳から65歳までの特老厚も請求できるんだな。何も知らなかったけど、年金制度はこんな仕組みなのかぁ」と思い、理解も深まりました。

続けて、晃彦さんは「妻は6年前に亡くなり年金は受け取らないままだった。自分は長生きして繰下げで受け取るつもりでいます」と職員に伝えました。

しかし、その瞬間、職員の表情が変わります。そして、「あの……、亡くなった奥さまとはずっと同居もされていて、亡くなられた当時、晃彦さんの年収は当時850万円未満でしたか?」と聞かれ、「そうですけど。当時もそんなには高収入じゃなかったなぁ」と答えます。

すると職員から「繰下げ受給はできません。65歳からの老齢基礎年金と老齢厚生年金は65歳から受給を開始してください」と告げられました。

この突然の話に晃彦さんは驚き、「長生きに備えて繰下げしたかったのに何で?」と疑問が湧いてきます。健康に自信があり、亜矢さんの分まで長生きして、年金も繰下げで増額されるつもりで考えていたのに……。

なぜこんなことが起きてしまったのでしょうか。

●繰下げによる年金増額がかなわなかった理由とは? 後編【「長生きに備えたかったのに…」64歳男性が年金の繰下げを断られてしまった「1つの原因」】で詳説します。

※プライバシー保護のため、内容を一部脚色しています。