<前編のあらすじ>
来年古希を迎える山口誠さん(仮名)は、輸入食品を扱う専門商社の経理マンとして65歳まで働いてきました。お金を扱う仕事だったため、資産形成への関心も高く、堅実に老後の準備をしてきました。
そのおかげで、山口さん夫婦の収入は個人年金保険も合わせた年金収入25万円に、実家を立て替えたアパートからの家賃収入30万円(経費を除く実質収入は15万円)もあり、年に1回は夫婦で海外旅行を楽しめるくらいの余裕があるはずでした。
ところが、山口さんの老後のライフプランに思わぬ誤算が次々と襲い掛かります。1つ目は大学キャンパスの都心回帰、2つ目は結婚した娘が実家へ戻ってきたことです。
●前編:【「この先不安しかない」年金25万円に不労所得30万円…万全の備えで老後を迎えた夫婦を襲った大誤算】
思わぬ誤算続きのライフプラン
私は来年古希を迎える元会社員の年金受給者です。経理畑が長く人並みの金融リテラシーは持っており、子供は娘が2人だったこともあって、老後は夫婦で経済的に自立した生活が送れるよう、しっかり準備してきたつもりでした。
中小企業勤務で企業年金はなく、退職金も世間一般よりはかなり少なめでしたが、完全リタイアした65歳で貯蓄は2500万円を超えていました。世帯の年金額は個人年金保険も合わせて手取りで25万円、他に私の実家を立て替えたワンルームアパートの家賃収入が30万円ほど見込め、つつましく暮らしていれば年に1回は夫婦で海外旅行を楽しめるくらいの余裕があるはずでした。
ところが思わぬ誤算の連続で、老後のライフプランに暗雲が立ち込めました。
1つ目の誤算は、アパートのある千葉県の文教エリアで大学キャンパスの都心への移転が相次ぎ、賃貸経営がうまくいかなくなってきたことです。来年にはアパート近くの有名私大も移転してしまい、このままだとアパートローンの返済に支障を来す可能性もあります。しかし、ローンの返済はまだ10年以上残っていて、アパートの評価額をローンの残高が上回るため、売るにも売れない状況なのです。
そして、さらに大きな誤算となったのが次女が子連れで戻ってきたことでした。
次女はマイペースで楽天的な末っ子気質で、生真面目な私たち夫婦はその身勝手な行動にさんざん振り回されてきました。それでも大学を卒業して旅行代理店に勤務し、取引先の旅館の跡取り息子と結婚して2人の子供に恵まれ、落ち着いた日々を送っているものとばかり思っていました。