コロナ禍で次女夫婦の仲が悪化
先方のご両親は2人とも気配りの行き届いた人格者で、旅館の経営には義姉2人も関わっていることから、娘は家業にタッチせず、子育てに専念してくれればいいと言ってくれました。
ひなびた地方の温泉地ですが、豊かな自然に恵まれ、近年は開発が進んで近くに総合リゾートや美術館が建設されたこともあって、娘自身も新しい土地での生活を楽しんでいるように見えました。
ところがコロナ禍で旅館が長期にわたって休業を余儀なくされ経営基盤が揺らぐ事態となり、夫婦仲もおかしくなったようです。日常的にいさかいが絶えなくなり、そうした中で婿が若い仲居といい仲になったらしく、怒った娘がいきなり子連れでわが家に戻ってきたのです。
上の子供は男の子で将来の跡取りを期待されており、学校の問題もあって本人も「お父さんと一緒にいたい」と言うので旅館に残してきたとのことでした。そして当時4歳を迎えたばかりの下の娘を連れてきたのですが、この孫娘が幼い頃の次女に見た目も中身もそっくり。「どうしてじぃじのおうちには3DSがないの?」「煮物は嫌い、ハンバーグが食べたい」と、言いたい放題、やりたい放題です。
かくして、私たち夫婦の生活は突然の闖入者(ちんにゅうしゃ)たちにかき回されることになったのです。娘夫婦は1年がかりの話し合いの末、離婚しました。しかし、婚家の旅館は結局立て直すことができず、所有権を第三者に譲ることになりました。
立派な旅館でしたがコロナ禍の借金が膨らんでいたため、売却しても手元にはほとんどお金が残らなかったようです。義両親からは、私たちのもとに長いおわびの手紙と100万円の小切手が送られてきました。
私たち夫婦としては、そのお金で娘に再出発してほしかったのですが、娘は一向にアクションを起こす気配がありません。出戻ってからはずっと上げ膳据え膳のお客さま暮らしで、仕事と言えば孫娘の幼稚園の送迎くらい。時には幼稚園ママと飲みに行ったり、好きなアイドルの映画やコンサートに出掛けたり、勝手気ままな暮らしをしています。家の中では専ら孫娘とゲームざんまいです。
インターネットで頻繁に洋服を買ったりしているようなので、このままでは向こうのご両親のせっかくのお気持ちがムダになると苦言を呈したら、「お父さんは私がどれくらい傷ついているのか分かってない」と逆切れされました。