<前編のあらすじ>

65歳の恵一さん(仮名)は、61歳の妻・綾子さん(仮名)と暮らしています。まもなく66歳で退職を迎える恵一さんですが、「仕事を辞めると何もやることなくて暇を持て余すのは目に見えている。働く体力のあるうちは働いて稼ぎたい」と再就職への意欲を見せています。

ところが、失業給付を受けると年金が止まってしまうという噂を耳にします。1年前に同級生の友人が実際にそうなったという話も思い出し、家計の見通しに不安を覚えた恵一さんは、年金事務所へ確認に行きました。

●前編:【失業給付を受けると年金が止まる⁉ 老後の生活のために再就職を目指す65歳男性が耳にした気になる“噂”、その真相は…】

離職日が65歳前か65歳以降かで異なる「失業給付」の仕組み

一定期間雇用保険に加入していた人が、退職後ハローワークで求職の申込みをして失業状態であると認定されると、失業給付が受けられることになります。しかし、その失業給付の種類は離職日が65歳前か65歳以降かで異なります。

65歳前(65歳の誕生日の前々日以前)の離職の場合に受給できるのは基本手当で、65歳(65歳の誕生日の前日)以降の離職によって受給できるのは高年齢求職者給付金となります。

基本手当は求職の申込みをして以降、求職活動を進め、ハローワークで28日に1回、失業認定日に失業認定がされると、その日数分について支給されます。支給日数は雇用保険の加入期間によって、90日分(加入期間10年未満)、120日分(加入期間10年以上20年未満)、150日分(加入期間20年以上)と定められ、離職理由によってはその日数がさらに多くなることもあります。この基本手当は特別支給の老齢厚生年金(特老厚)と調整がされることになっています。失業して基本手当が支給される間、当該年金は支給停止となり、基本手当の支給が終わってから年金の支給が再開する流れになります。

一方、高年齢求職者給付金は求職の申込み後に行う失業の認定は1回で、失業が認定されると支給されます。雇用保険の加入期間が1年未満の場合は基本手当の30日分、1年以上の場合は基本手当の50日分支給が一括で支給されることになります。恵一さんの場合、1年以上雇用保険に加入し続けているので、基本手当の50日分となります。この高年齢求職者給付金を受け取っても、65歳以降の老齢基礎年金や老齢厚生年金は調整されず、あわせて受け取ることができます。

恵一さんの友人は65歳前に退職して失業給付を受けることになっていたため、基本手当の受給が終わるまで特老厚が受け取れないことになりましたが、既に65歳まで勤務していた恵一さんの場合は事情が異なり、年金との調整はありません。