長島さんへ遺された手紙
佐々木さんが長島さんやケアマネジャーさんに見守られて息を引き取ったのは、私のところに相談にいらしてから1年後でした。その頃の佐々木さんは「最近、お父さんの夢をよく見る。長島さんや相馬さんのおかげでもう思い残したことはないから、いつでもあっちへ行ける」と笑って話していました。
佐々木さんが亡くなった後、葬儀や納骨など一切を取り仕切ったのも長島さんでした。現行法では、成年後見人がサポートするのは存命の間に限られます。しかし、長島さんは佐々木さんの意をくんで契約したシンプルな葬儀プランに沿って葬儀を執り行い、翌日には千葉県の永代供養墓への納骨を済ませました。
そして、死後の行政や金融機関の手続き、相続税の申告、ご主人の実家への送金などをつつがなく済ませていったのです。
佐々木さんの遺品の中から長島さんへの手紙が見つかったのは、そんな時でした。
そこには、佐々木さんらしいきちょうめんな字で「長島さんは私の希望です。人生の最期に長島さんのような人と会えて幸運でした。本当にありがとう。さようなら」としたためてありました。
私自身、長島さんの仕事ぶりには常々感服していましたが、佐々木さんのケースは特別でした。まさに「被後見人に寄り添う後見人」の本領発揮で、どこぞの大物弁護士後見人に爪のあかを飲ませたいくらいです。
少子高齢化が進み、今後は佐々木さんのように身寄りもなく死を迎える人がますます増えることが予想されます。死後も含めた後見制度の法制化が急がれますが、まだまだ時間がかかるでしょう。そうした中で、長島さんのような心ある専門家の方々がご活躍されることを切に祈ります。
※個人が特定されないよう事例を一部変更、再構成しています。