<前編のあらすじ>

ある春の朝、愛菜の自宅玄関を見知らぬ男が何度もたたく。警察に通報しよう。そう思い夫・毅の方を振り返ると毅は青ざめていた。どうやら思い当たる節があるらしい。

毅が白状したところによれば、会社の後輩がこさえた借金の連帯保証人になってしまったが、当の本人と連絡がつかなくなってしまったのだという。どうやら玄関先の男はその借金の取り立て人のようだった。

娘もいるし、家の教育ローンもあるのになぜ相談もせず……。呆れた愛菜は家を出て行ってしまう。

家に残され、一人呆然とする毅。一家はいったい、どうなってしまうのか。

前編:自宅に訪れた不審者に青ざめる夫 「実は100万円くらいある…」その口から告げられた衝撃の事実

早く戻ってきてくれ

あっという間に出て行ってしまった妻を前になす術なく、毅は静かになった家のなかに立ち尽くしていた。いつの間にか玄関のドアを叩く音も止んでいた。だんだんと目の前で起きたことの、つまりは自分が陥った状況の深刻さが実感を増してきて、毅は大きな後悔のなかに突き落とされた気分になった。

はっと我に返った毅はスマホを取り出して電話をかけ、相手が出るや悲鳴のような声を上げて訴える。

「おい、竜二、今どこいる? 早く戻ってきてくれ」

心細さを感じながら待っていると、2分もしないうちにインターホンが鳴った。玄関のドアを開けると、髪をオールバックに撫でつけ、柄もののシャツを第2ボタンまで開けて着ており、色の薄いサングラスをかけた竜二が立っていた。

「どうです、これ? だいぶ借金取りっぽいですよね?」

「もういいから、さっさと入れ」

竜二の腕を引き、家のなかへと入れる。毅の様子を見て、竜二も何か不穏なことが起こってると気付いたのか黙って従い、通されたリビングの椅子に腰を下ろした。

「……あの奥さんは?」

「出てった。実家に帰るってさ」

毅の言葉に竜二は仰天する。

「え⁉ 何でですか⁉」

「借金するようなヤツとは一緒に住めないんだと」

「いや、だってそれは……」

「分かってるよ。嘘だよ。エイプリルフールでちょっとしたドッキリをしかけただけだよ! でもさ、なんか俺もテンパってネタバラシのタイミング見失っちゃってさ」