二人のたくらみ

話は3日前にさかのぼる。その日、毅は久しぶりに竜二と仕事終わりにお酒を飲んでいた。そこでもうすぐエイプリルフールだという話になり、今回のどっきりをしようということになったのだ。

「どうするんですか?」

「どうするもこうするもないだろ! そもそも俺はお前が無理やりこんなことをやろうとか言うから……」

「そんなのズルいっすよ! 毅さんだってノリノリだったじゃないですか! この100均のサングラスだって毅さんが買ってくれたもんなんですよ」

毅は頭を抱える。タイムマシンがほしいとこれほどまでに願ったことはない。

「あ~、マジでどうしよう~。このまま本気で離婚なんて最悪だぞ」

「いやいや悩んでる暇なんてないでしょ。今すぐに奥さんと話をしないとダメですって」

竜二の提案に毅はうなずく。うなずくが、どうしたらいいか分からない。今さらドッキリだったと話したところで、愛菜は許してはくれないだろう。

「そんなの分かってるけどさ、もう実家に帰っちゃったんだぜ」

「ここから遠いんですか?」

「いやそんなに遠いってわけじゃ……」

「だったら追いかけましょうよ! このまま離婚していいんですか⁉」

いいはずがない。このまま家で悩んでいても状況は解決しないことは分かっている。だとすれば、どれほど怒られ、詰られることになろうが、愛菜に事情を説明して謝らなければいけない。

「……よし、行こう。竜二もついてこいよ」

「えっ⁉ 俺もですか⁉」

「当たり前だ! タクシー代は割り勘だからな!」

「ええ~」

不満そうな竜二を強引に連れて、毅はタクシーで愛菜の実家へと向かった。