人事部へ異動してからの活躍
それ以降、人事部で退職金制度、報酬制度、関連会社の人事制度を始め、あらゆる制度作りに没頭しました。人事部主催の社内イベントなど、頼まれることはすべてこなしてきました。
仕事を確実にこなすKさんは上司からも重宝され、ライン管理職の道でなく実務マネージャーとして活躍。これが幸いし、専門知識を深めながら多くの実務を経験できました。そのおかげで“デキる実務担当者”として人事部に長期間在籍できたのです。
もしライン管理職の道を歩んでいたら、実務を人に任せるので、自分では専門を極めることはできなかったでしょう。Kさんはこの時点から、まさに定年後に役立つキャリアを築いていたことになります。これからの世の中は「個人として何ができるか」が問われる時代なので、自分の専門、独自のオリジナリティーを極めることが生命線になることでしょう。
副業はまさかの司会業!
Kさんは人事部でのキャリアを着実に積み重ねながら、実は、会社の仕事以外に「結婚式の司会」の副業をしていました。学生時代にアルバイトとして始めた仕事でしたが、地元で就職してからも、また東京に転職してからも、関係者から紹介を受けてずっと続けていたのでした。
司会業では本当に様々な人との出会いがあり、1つの会社にいてはわからないことを数多く経験できました。同業者や音楽・装飾・美容関係の人など、あらゆる業界の人と知り合い、そこでできた横のつながりは仕事をする上で大変勉強になりました。
また、ある時には本業の人事部で社内イベントで、司会業での人脈を活かした関係者を手配し、大変スムーズに企画が進んだこともありました。想定外の本業との相乗効果を感じ、「本当に何がどこで役立つのか分からない」とKさんは思いました。
今の時代でこそ「副業で学んだことが本業に役立つ」などと言われていますが、Kさんこそ、それを学生時代から実践していた先駆者と言えるでしょう。
こうして証券会社と副業の司会業という両軸でキャリアを進めてきたKさんは、60歳の定年後、再雇用を選択せず、退職の道を選択することにしました。先のことはあまり深く考えていませんでしたが、定年後、ある出来事をきっかけに驚くほどうまく歯車が回るようになります。
●そのきっかけになった出来事とは何だったのか? 後編【「会社に使われない人生」を選んだ60代男性、独立を大成功に導いた出会い】で解説します。