過去にどんなに素晴らしいキャリアを積んできた人でも、定年後の再就職の壁は高く、苦労が伴うものです。その上、女性においてはロールモデルとなる体験談も少なく、参考にできる情報が圧倒的に足りていません。

そこで、今回は「女性の定年後」をテーマに、長年マーケティング会社に勤めたKさん(60代・女性)の再就職の事例をご紹介します。

マーケティング会社に勤めたKさんの場合

Kさんは大学卒業後、料理関係のマーケティング会社に入社して、そこから転職することなく1つの会社で働いてきました。会社ではさまざまな仕事をこなしながら、最終的には社長秘書となりました。

日本は、女性の管理職、女性の役員の数が欧米と比較してかなり少ない現状があります。今となってはずいぶん職場での男女の区別はなくなってきたと言っても、完全に平等とは言えないでしょう。

そんな中で、男女雇用均等法がない時代から正社員として働いてきたKさん。読者のみなさんは、いわゆる「自信みなぎるバリバリのキャリアウーマン」を想像されるかもしれません。実際、Kさんは大変優秀な社員だったので、経営者にとっても安心できる存在で、「定年後も長く働いてほしい」と言われていました。しかし、Kさん自身が定年前に持っていた考えは意外なものでした。

「自分は会社規模100人程度の中小企業で務めてきた。女性で、エリートでもなく、雑草のような自分だから、気を引き締めてかからないと再就職なんてとても無理だろう」

Kさんは自分の雇用状況について、「市場価値がある今のうちに、自分の得意なことを活かし、これからの仕事を考えたい」という思いがあったのです。かといって、長く勤めた会社を離れ、新たな一歩を踏み出す決断にはかなりの勇気が必要でした。