金融業界で長年サラリーマンをやってきたMさんは、定年退職を控えた58歳の時、「今までやってきた資産運用の仕事をこのままサラリーマンとして続けていいのだろうか」と悩み始めました。

そんな時、ある雑誌で読んだ経済コラムニストの大江英樹さんの「定年後は好きな仕事をするべきだ」という趣旨の記事を読み、「自分に必要だったのはこの考え方だ」と気付いたのです。

そうして定年後は好きなことをしようと思ったものの、今度は自分の好きなこととは何か、という悩みに直面。その後、付き合いがあった僧侶をしている先輩からのアドバイスを受け、「仏教を学ぶ」という答えを見つけ、仏教の通信教育を受け始めます。

●Mさんはどうやって自分の“好き”を思い出したのか?
※前編【業界一筋の58歳金融マンが悩んだ定年後の道―背中を押したある言葉】からの続き

そして訪れた人生の転機

通信教育も終わりに近づいた頃、なんと先輩に「次は得度(とくど)をしたら?」とアドバイスをされました。

得度とは、お坊さんになるための修行の1つです。Mさんは自分が得度を⁉ と一瞬驚きましたが、別に修行をしたからと言って僧侶を仕事にしなくてもいいのだからと思い、そんなに躊躇することなくアドバイスに従ってみることにしました。

こうして次第に深くお寺と関わる機会も増え、今後もさらに学びを続けたいと思うようになった頃、先輩から人生の転機となる誘いを受けることになりました。

「ここで働いてみないか?」

これまでのキャリアとはまったく異なる大きな方向変換の申し出でしたが、その頃にはこれが自分の進む道だと考えるようになり、いよいよ64歳の時に会社を辞めることを決意しました。