仕事探しをスタート

人生には仕事が必要だ。そう気付いてからのHさんの行動は早いものでした。

まずは仕事を探しにハローワークに行ってみます。しかし、期待に反して希望する職種は見つかりません。かろうじて見つけた希望に近い職種に応募しても、年齢という高い壁が立ちはだかり全滅してしまいました。

ですが、そこで諦めないのがHさん。希望の仕事がないならばと、地元の商工会議所が開催している「創業塾」(※)の門をたたきます。

※高齢者に向けて起業のノウハウを教え、サポートを行う塾・セミナーは民間・行政問わず提供されています。現在行政は高齢者の創業支援に力を入れているので、各自治体でも見つけることができます。

Hさんはその塾の講師に、「Hさんは新聞記者だったから、新聞記者が行政書士になるのも面白いのではないですか?」と促されました。

「講師の人がそう言われるのだから、やってみてもいいかもしれない」と考え始め、思い立ったが吉日、早速帰りに書店に立ち寄って対策本を購入しました。

初めはそこまで興味があったわけではありませんが、学び始めると案外面白く感じるものでした。また、久しぶりに腰を入れて勉強を始めたので、学生時代に戻ったような感覚もあります。

その後は「1人でやるより学校で学ぼう」と思い立ち、週1で専門学校に通うことに決めました。

見事合格するも…よぎる将来への不安

そうして鋭意努力した結果、Hさんは67歳で見事試験に合格しました。半年後には行政書士事務所を開業するまでこぎつけます。専門は「遺言書作成」と「相続業務」です。

しかし、なにしろ初めての経験ですから、もちろんすぐに仕事が殺到するわけではありません。すべてが手探り状態からのスタートでした。

「無事開業はできたものの、さて、これからどうなるんだろう」

先の見えない開業には大きな不安が頭をよぎりました。しかし、この後Hさんは自身が選択した資格取得とセカンドキャリアに、思いがけない“メリット”を感じることになるのでした。

●不安でいっぱいのHさんが感じた予想外のメリットとは何だったのか――?
続きは、後編【定年後に一念発起し“士業”へ転身―「手に職」で叶えた孤独との決別】で解説します。