50歳は多くの人が定年やその先の老後生活について思いを巡らせる「節目の年齢」。同時に「老後のお金は大丈夫だろうか……?」と老後資金についての不安が芽生えるケースがほとんどのようです。
そうはいっても、何から始めればいいか分からない、「お金を増やすには投資」と聞いても経験ゼロなので不安……そんな声に「50歳、投資経験ゼロ、資金ゼロの方も心配はいりません」と寄り添うのは、お金のパーソナルコーチとして絶大な信頼を得る濵島成士郎氏。
著書『老後の不安がなくなる50歳からのお金の増やし方』では、用意すべき老後資金の把握のしかたから、投資の実践までわかりやすく優しく指南しています。今回は特別に、同書の第1章『結局、「これからの人生、必要なお金」はいくらか?』の一部を公開します(全3回)。
※本稿は濵島成士郎著『老後の不安がなくなる50歳からのお金の増やし方』(三笠書房)の一部を再編集したものです。
資産形成を進める前に「将来の暮らし」をイメージしよう
50歳からお金を増やす――つまり、老後の資産形成を始める前に、まず考えてほしいことがあります。
それは、老後(リタイア後)にいくらお金が必要かということです。
あなたは、老後にいくらお金が必要でしょうか?
これは、じつはあなたの人生を左右する「重要な問い」です。
なぜなら、老後にいくらお金が必要かによって、50歳からのお金の増やし方、つまり、あなたの資産形成のプランが決まってくるからです。
この問いにすぐに答えられた人は、「お金リテラシー」の高い方だと断言できます。将来に向けて、すでにきちんと資産形成を始めていることでしょう。
でも、私の経験上、老後にいくら必要か、すぐには答えられない人が圧倒的に多いと思います。これまで日々の仕事に精一杯で、老後について具体的に考える機会がなかったという人が大半だからです。
なんとなく「老後に2000万円必要」と考えた人がいるかもしれません。
2019年6月に金融審議会市場ワーキング・グループの報告書に記載された数字が独り歩きし、「老後に2000万円不足する」といった誤った情報が拡散されました。国民の不安感情を煽り立てる情報として大きな話題になりましたから、漠然と「老後に2000万円必要」とイメージした人は少なくないでしょう。
しかし、この数字はあくまで一般論です。もちろん、あなた自身の将来を示しているものでもありません。参考までに数字の根拠をあげましょう。
この報告書で示されたのは、「夫65歳以上、妻60歳以上の夫婦のみの無職世帯は、平均で、月の支出が26万3718円、収入は20万9198円であり、差し引き毎月5万4520円を貯蓄等の取り崩しで対応している」というアンケート結果です(介護費用や住宅リフォーム費用等の特別な支出は含まれていません)。
仮にこの状態が30年続くとすると、5万4520円×12カ月×30年=1962万 7200円、つまり約2000万円の取り崩しが必要になるとしました。これが「老後2000万円問題」の正体です。
このデータに間違いがあるわけではありません。ただし、この数字をどうとらえるかには注意が必要です。
2000万円という数字は、「現在夫65歳以上、妻60歳以上の夫婦」で「夫婦ともに無職の人」の「平均値」にすぎません。日本国民の全員が老後に2000万円足りないのではなく、現在の高齢夫婦無職世帯は「平均的に毎月5万円ほど貯蓄等の取り崩しをしています」というだけのことなのです。
働き方や生活スタイルが多様化し、資産もパートナーの有無も人それぞれ違います。
ならば、老後に必要なお金だって、人それぞれで変わってくるのが当然です。