Hさんは長年勤務していた新聞社を65歳で退職。現役時代は仕事が多忙を極め、退職後のことは具体的に考える暇がありませんでした。退職後はやることのない日々に喪失感を覚え、セカンドキャリアをスタートすることを決意。

しかし、最初に訪れたハローワークでは希望職種が見つからず、応募したものも全滅。すがる気持ちで見つけた商工会議所主催の「創業塾」で、講師から行政書士の道を提案されました。

その後は資格取得を目標として、独学に加え週1回専門学校に通い続けます。そうして鋭意努力した結果、見事に行政書士の試験に合格。行政書士事務所を開くことが叶いました。

●趣味で心の穴は埋まらない…。ハローワークでの職探しから始まったHさんの奮闘
※前編【「何て寂しいんだろう」喪失感埋まらず一大決心…新聞記者の定年後】からの続き

実感した3つのメリット

Hさんは不安を抱えながら「行政書士事務所」を開業しましたが、当初はこれといった人脈もなく、まずは顧客獲得が急務となりました。

行政書士の世界は、住所に基づき支部に所属するのが一般的であったため、Hさんも事務所近くの支部に入ります。そこで知り合った先輩方から、必要なさまざまな知識を学びました。

そこでは、若い人と違い、シニアにとって行政書士の資格と業務には意外なメリットがあることを知りました。

1.会員層に同年代が多い

まず1つ目が、会員にはシニア世代も多いという事実です。これは心強いものです。定年後に若い人の輪の中に入って教えを乞うことは、どんな方でもやりづらさを感じると思われますが、シニア同士であれば、頭を下げて教えてもらうことにそこまで抵抗はありません。

2.経験が活きる

2つ目は、現役時代にしたさまざまな経験が実務に役立つということです。

長く会社に勤めて仕事をする中で、人は専門知識だけでなく、人間関係の機微など言葉にできないようなことも自然と学んできているものです。豊富な人生経験があることが、顧客獲得の際に役立ちます。

特に相続業務などは複雑な人間関係が絡んでくるので、まさにシニアの経験が相手の立場に寄り添う姿勢につながり、信頼関係の構築に役立つのです。

3.仲間・友達ができる

3つ目は、仕事を通じて、話し合える仲間・友達ができることです。

行政書士は専門性をもって長く続けられる仕事なので、特に意識せずとも継続的に人との関わりが持てます。定年後のシニアにあるリスクの中でも、「孤独」は深刻な問題です。じわじわとボディーブローのように心をむしばんでくるのです。

「気付いた時は周りに誰もいなかった」。そんな状態を避けるためにも、友達が生じやすい仕組みのある環境に身を置くことは大きな利点になります。