定年後のキャリアに資格取得は必要? 不必要?

定年後の仕事に役立てようと資格取得を考える方は多くいます。一般的に「資格を持つことで仕事に有利に働く」という考えが浸透しているからです。その一方で、「資格を取っても、仕事に直接役立つことはないのでは?」と思われる方もいるでしょう。

これはある意味どちらも正しいと言えます。

ただ、定年後の60代においては、資格を取ることでいくつものメリットを享受できることをご存じでしょうか? 今回は、定年退職後に“行政書士”の資格を取られた「Hさん」のケースを見ながら考えます。

新聞記者をしていたHさんの定年後

Hさんは現役時代、新聞記者をしていました。60歳で定年を迎えてからは、65歳まで再雇用で働き、65歳で退職されました。

現役時代は仕事一筋だったHさん。定年後のことは具体的には計画していなかったため、退職してから「さて、どうしようか」と考え始めました。

退職後しばらくは、現役時代に仕事が常に立て込んでいたこともあり、忙しく動き回る必要のない解放感に浸っていました。

しかし、新聞記者で走り回っておられた習慣からでしょうか、こうした状態は2週間ともたず、だんだんと退屈さを感じてきました。

「こんなことを続けていていいのだろうか。何だか面白くないな」

それもそのはず、現役時代に忙しい日々を送ってきた方ほど、退職後は虚無感とも言える物足りない気持ちになる方も少なくないのです。

そこで、多くの方が「定年後は趣味を謳歌しよう」と考えるのと同じように、Hさんも行動を起こしました。

Hさんは、63歳の時「老後の趣味に」と始めたピアノを弾いてみたり、車好きが高じて買ったスポーツカーでドライブをしたり……。しかし、趣味だけでは心に空いた穴を埋められず、あることに気づきました。

「趣味は食事で言う“前菜”か“デザート”だったんだ。人生最後の食事にメインディッシュ(仕事)がないのは何て寂しいんだろう」