大手製薬会社に勤務していた髙橋さん。長く営業職として活躍し、人事部で採用職も経験しました。57歳の時、会社の経営状況の悪化で「早期退職プログラム」が発表されたことをきっかけに退職を決意。
退職後は、就職活動に苦戦しながらも、過去に経験した採用職のスキルを活かし、保育園を運営する会社でセカンドキャリアをスタートさせることになりました。
しかし、本当の試練は就職してからが始まりだったのです。
●定年後の就職活動は想像以上に厳しかった……。
※前編「『新しい世界が見たい』57歳で決意した再就職、待ち受けていた試練」からの続き
上から目線の態度で周囲と対立
再就職をして最初に課せられたミッションは、「5カ月で20名近くの保育士を採用する」というもの。通常の採用と比べて、かなり短期間で大きな成果を出さなくてはなりません。髙橋さんはとにかく結果を出そうと決意します。前職のやり方を踏襲しつつ、自分でどんどん仕事を進めていきました。
しかし、よかれと思ってやったはずのこの行動が、結果的に幹部の人たちに自分勝手で強引な印象を与えてしまったようです。次第にいじめに近い仕打ちを受けるようになりました。
ある時には、髙橋さんを「採用部門の責任者」と約束して採用しているにもかかわらず、社会人経験も浅く採用職も未経験の社員を上司にされるなど、信じがたい展開も起こりました。
髙橋さんはこの状況にかなり落ち込んでしまいました。そこで友人に一連の出来事を相談してみると、思わぬ回答が――。
「あなたのマイペースで上から目線の会話が、幹部の人の感情を逆なでしたんじゃないの?」
返す言葉のない鋭い指摘でした。この時になって初めて、自分にも落ち度があったことに気が付きます。自身のこれまでの振る舞いを反省した髙橋さんは、幹部の人たちに勇気をふり絞って謝罪することにしました。
「前職のやり方で、自分勝手に仕事を進めてしまっていました。皆さんに不快な思いをさせてしまい、本当に申し訳ありません」
話しているうち気持ちが溢れ、髙橋さんの目には涙がにじんできます。心からの謝罪が伝わったからでしょうか、その後は幹部の対応が激変し、関係性が大きく改善していきました。
「再就職先で上手くやっていくためには、『謙虚であること』が大切だったんだ」
失敗から学びを得た髙橋さん。謙虚な態度で周囲と協調して仕事を進めるうちに、次第に職場になくてはならない存在になりました。周囲とのいい関係性を維持しながら取り組んだ採用活動の実績は、年を追うごとにどんどん伸びていきました。
しかし、試練はこれだけではありません。