長期分散投資で投資額5700万円に対し利益は2900万円に
そこで、損失を確定する形になってしまいますが、まずはETFと国債を売却し、2900万円で投資信託を使った分散投資をしました。国内株式を10%、先進国株式を40%、新興国株式を10%、先進国債券を30%、新興国債券を5%、外国REITを5%の割合で保有できるよう投資信託を組み合わせます。さらに、同じ割合で月に18万円の積み立て投資も設定しました。
預貯金に残す金額は、生活費の1年分程度の500万円に設定しました。大黒柱のご主人が働けなくなったり、予期せぬ出費に見舞われた時に備えるお金です。橋爪さんはこの年齢でこれだけの貯金ができるほどですから生活は質素で、1年間の生活費は500万円も必要なかったのですが、生まれたばかりのお子さんもいるので、余裕を持ってこの金額に設定しました。
こうして、一括投資に加えて積立投資も並行し、底値近辺でもしっかり投資ができていたこともあって、2010年ごろから評価損がなくなり、資産はプラスになりました。現在、橋爪さんの投資信託の残高は約8600万円に達しています。投資元本が約5700万円、利益が約2900万円と実に約50%のプラスになっています。これは当初の損失額約400万円も含んだ数字です。年の利回りで換算すると、平均4.2%で運用できたことになります。
コロナ禍を経てZOOMのようなオンライン会議システムが当たり前になりましたが、当時はそこまで一般的なものではありませんでした。初めて実際にお会いしたのは相談から数年経ったころ、彼女が都内の実家に帰省した時で、そのとき実家のお母様から「ネットで知り合った人にお金の話をするなんて、大丈夫なの?」と心配されたという裏話もあります(笑)。
しかしその後も、Skype・電話でのアフターフォロー面談をベースに、折に触れてお目にかかったりしながら、12年以上にわたってお付き合いが続いています。近況をうかがいつつ、普通預金が貯まってくると追加投資をおすすめし、必要に応じてリバランスについてもアドバイスします。リバランスとは、値動きにより割合が高くなり過ぎた資産を売って、安くなった資産を買うことで、ポートフォリオを本来の割合に戻すこと。定期的な実施により運用成果の向上が期待できます。
この12年の間にも、コロナショック等の下落局面を何度か迎えていますが、「岩川さんは話す内容が一貫していてブレがないので、信頼できます」とありがたい言葉をかけてくださり、不安の色は見えません。「ネットで知り合った人」ではありますが、もうやめてほしいとお願いしているのに毎年立派なお歳暮を送ってくださるほど、信頼を寄せていただいているようです。
ここ数年、世界的な資産価格の上昇が続いているので、橋爪さんのように世界分散投資をしている人の運用成績は絶好調でしょう。それでも私は「リーマンショックのような事態はまた来ます」と、口酸っぱくお伝えしています。手痛い目に遭った橋爪さんなら大丈夫でしょうが、それでも、相場は上にも下にも変動するものであることを常に意識していてほしいからです。市場の値動きに一喜一憂することなく正しい運用を続けていけるよう、これからも伴走していきたいと思っています。