今回は、相続した預金の運用方法について相談を申し込まれた鈴木高志さん(仮名、50)の例をご紹介します。
ご家族: 妻 康子さん(50) パート 長女 有紀さん(18) 社会人
(いずれも仮名)
鈴木さんは投資経験こそないものの、税金等の知識が豊富で、相談前には自身でYouTubeや書籍で運用方法をリサーチし、親から相続した資産をさらに増やそうとYouTubeで紹介されていた個別株を購入したそうです。しかし、まとまった金額を投資したために日々の値動きが気になり、元本が減っていくことにも不安を感じていたといいます。そんな折、証券会社のウェブサイトで弊社のセミナー情報を見かけて参加され、その場で相談のご予約を取られていきました。
「積立投資が盤石」とは限らない
鈴木さんは現金だけでなく、株式や投資信託、不動産などの資産について親から相続していましたが、特に現金部分に当たる8000万円の運用方法に頭を悩ませているご様子。
ご自身で収集した情報だけでは、自分に合った運用スタイルは何なのかを決断できなかったそうです。とはいえ、いろいろと調べていく中で知った「安定した運用には『積立投資』が有効だ」という情報は信頼できる、と感じていたそうで、一括投資は鈴木さんの選択肢にありませんでした。
確かに、積立投資は時間分散によってリスクを軽減できるので、長期的に見れば安定した運用成果が期待できます。最近では「とにかく積立投資だけやっておけばOK」などと説明されることも多いのですが、万人にメリットがある手法というわけではありません。特に鈴木さんのように多くの預金を持つ方であれば、一括投資であっても債券などの比較的リスクの低い資産なら安定した運用で効率的にお金を増やすことができます。
積立投資は、投資に回せるお金が少額で、投資にかけられる期間が長い場合にはメリットが大きい一方、当然ながら初期の投資額は小さく、得られるリターンも小さくなってしまうのです。時間分散以外にも、安定運用を実現させるアプローチはいくつかあります。資産状況によっては、資産配分(アセットアロケーション)によってリスクを軽減していく選択肢もあります。
こうした点をご説明した上で、購入方法は一括投資で、投資する資産は債券を中心に構成するのがよいのではないかと提案しました。鈴木さんはうなずいた後、「実は、海外ETFの積立にも興味があって……」と語り始めました。