不確定要素はできるだけ排除すべき

今でもたまに考えることがある。達也さんは本当はどうすべきだったのか……。

正直なところ遺言書を作る以上、不確定要素はできるだけ排除すべきだ。制度上可能でも、誰かに相続分の指定を委ねるのはできる限り避けるべきであろう。

どうしてもそうする必要がある場合は、リスクを承知したうえで、予め相続分の指定を委ねる人物と、事前に意思を共有・確認しておくべきだ。

指定する前に一度話をして、本当に指定していいのか見極めておくことも必要だろう。

いずれにせよ、達也さんの最大の「悪手」は、自分の決断を兄とはいえ他人に委ねた優柔不断さにあった。

いくら学さんのことを信用していたとしても、事前の意思確認や相談は最低でもしておくべきだった。

本人が責任をもって決めるべき

事件から半年ほど経過したころ、学さんから「洋子とは疎遠になりましたが、相続自体は無事に終わりました」と報告があった。

今回、達也さんが相続分の具体的な割合の決定を兄に委ねた結果、洋子さんという特定の相続人が大きな不満を抱き、親族間の絆が崩壊してしまう結果となった。

遺言書は、単に書けば良いというものではない。できる限り具体的にかつ一貫して他者の意思が入らないように慎重に考える必要がある。

特に以下のような場合はトラブルになりやすいため注意が必要だろう。

 

・相続分の決定を第三者に任せる

・相続人間で価値観が違う可能性がある

・相続人の中に経済格差がある

 

遺言書は故人の最終意思を明確にすることで、残された家族を守るためのものだ。
だからこそ、遺言書における相続分の指定は本人が責任をもって決めるべきなのだ。

今自分では決められない。だからこそ信用できる誰かに……という気持ちはわかる。だが突き詰めればそれは逃げでしかない。

相続人のことを真に思うのであれば、最高の相続分を指定してあげることが大切ではないだろうか。

私は読者諸兄に声を大にして伝えたい。達也さんのように、相続をきっかけに親族間の争いを招かないためにも、第三者が相続分を指定できるような内容の遺言書の作成は絶対に避けるべきだと。

※プライバシー保護のため、事例内容に一部変更を加えています。