<前編のあらすじ>

会社員の慎太郎は妻・美菜の管理する小遣い制で暮らしている。かつて競馬にはまり80万円の借金を作り、美菜が完済してくれた過去がある。それ以来ギャンブルはしないと約束していた。

ある夜、美菜が慎太郎のコートのポケットから馬券を発見する。付き合いで1000円だけ賭けたものだったが、美菜は「黙っていたこと」に激怒。慎太郎も売り言葉に買い言葉で開き直ってしまい、2人は冷戦状態に陥る。

後悔しながらも謝るきっかけをつかめずにいた慎太郎は、ある日の昼休み、立ち飲み屋の貼紙で「3月9日=サンキューの日」を知り、その日に美菜へ感謝とおわびを伝えるアイデアを思いつく。

●前編【「ギャンブルはもうしないって約束だったよね?」80万の借金を返済してくれた妻に夫が隠していたこととは?

「サンキューの日」に向けた慎太郎の計画

慎太郎は3月9日に美菜へプレゼントをしようと思いつき、準備を始めた。

何をプレゼントするべきか本人に聞くことは当然できないので、慎太郎はネットで検索し、おすすめに出てきたハンドクリームを仕事帰りに購入して通勤カバンに忍ばせた。

帰宅するとそのまま慎太郎は部屋着に着替えるために寝室へと向かった。カバンからハンドクリームを取り出して寝室のクローゼットの上段に置こうと考えた。上段は普段使わない荷物置きのような状態になっていて、基本的に美菜はそこを見たりしないと考えたのだ。少なくとも3月9日までのこの一週間の間なら置いておいて問題ないと思った。

「パパ、早くご飯食べよーよ!」

悠希が慎太郎を呼びに来たのだ。なぜこんなときにと慎太郎は内心ツッコミを入れた。すると悠希はすぐに慎太郎が持つ袋に気付き、嬉しそうに近づいてきた。

「何それ? お菓子?」

慎太郎は膝を折って悠希と目線の高さを並べた。

「悠希、これはお母さんに内緒にしてくれるか?」

「何で?」

「3月9日にお母さんに感謝の気持ちを伝えるってことをしたいんだ。そのときにこのプレゼントもお母さんに渡したいから、それまでは黙っておいてほしいんだよ。お母さんをびっくりさせたいからさ」

慎太郎の説明を聞き、悠希は首をかしげた。

「ママの誕生日じゃないよね?」

「ああ。でも3月9日はサンキューの日って言って感謝を伝える日なんだよ。それでいつもありがとうってお母さんに伝えようと思ってるんだ」