悠希の素朴な疑問

説明をしながら慎太郎は悠希も仲間に引き入れることを考えた。そうやって連帯意識を持てば黙ってくれるだろうと思ったのだ。

「そうだ、悠希も一緒にお母さんにありがとうを伝えないか? 悠希がお手紙を書いたらきっとお母さんは喜ぶと思うぞ」

悪い提案ではないと思ったのだが悠希の顔は浮かばない。慎太郎は早めにこの話を終わらせないと美菜に勘づかれると思い、悠希の両腕を握って説得をした。

「どうした? 何か気になることでもあるのか? お母さんが喜ぶ顔を見たくないか?」

すると悠希は真正面にこちらを見てきた。

「どうしてその日に言わないとダメなの?」

「……え?」

「ありがとうはいつも言いなさいってママも先生も言ってたよ。だから僕もありがとうっていつも言ってるのに、どうしてその日まで待たないとダメなの?」

悠希の質問に慎太郎は答えることができなかった。

確かにどうしてあと1週間も待たないといけないのか、その理由を説明することはできない。悠希は挨拶などをちゃんとやると褒められていたし、そんな悠希のことを慎太郎も嬉しく思っていた。だから悠希の言ってることは正しい。間違ってるのは自分自身だ。間違ってるのだから説明なんてできるわけがない。

「悠希、ご飯冷めちゃうよ〜。パパを連れてきて〜」

そう言われて悠希は慎太郎の腕を引っ張る。

「ほら、早くご飯食べようよ」

「そ、そうだな。ごめんごめん。変なことを言っちゃって」

慎太郎は手に持っていた袋をベッドに置いて寝室を出た。