「どういうつもりでこんな内容にしたんですか?」

私の事務所に突然電話をかけてきたのは、洋子さん(仮名)でした。彼女の声は怒りに震えていた。話を聞いてみると、洋子さんの父の達也さんが亡くなり、その遺言書の内容を巡って家族の間で大きな争いが起きていたという。

遺言書が存在していたのに、なぜ荒れる相続になったのだろうか。私が過去請け負った事例を基に、遺言書の内容を第三者に委ねるとトラブルを生みやすいことを解説しよう。

「兄に決めてもらいたい」

今回遺言書を作成した達也さんが私の事務所に来たのは、数年前のことだった。
「ネットの記事を見て、そろそろ遺言書を書いておいた方がいいと思って」という理由で私のもとに相談に来たのだ。

当時の達也さんは病を抱えており、心身ともにかなり弱っていた。その様子は事務所に来た時のやつれた様子や、少し動いただけでも息切れする様子からも伺えた。

そんな体調の中でも「子どもたちに迷惑をかけたくない」という思いで遺言書を作る決断をしたようだ。

達也さんの相続人は次の2人だった。

 

・長男の賢治さん(40代)

・長女の洋子さん(30代)

 

通常、遺言書において特段の意思表示がなければ、賢治さんと洋子さんで半分ずつ相続することになる。仮に遺産が5000万円あったとすると、2500万円ずつ相続するわけだ。

これは現在の法律が兄弟姉妹の相続分は原則等分としていることによる。

ところが、遺言書作成の途中で、達也さんはこう言いだした。

「相続の割合については決めきれない。兄に決めてもらいたい」

達也さんの言う「兄」とは、達也さんの実兄であり、相続人である子どもたちから見れば伯父にあたる人物、学さんである。