「後で必ずトラブルになります」

その言葉を聞いた私は嫌な予感がした。そして、正直にこう伝えた。

「それはやめた方がいいと思います」

それに対して達也さんは「なぜでしょうか」と、本当に理由が分からないという表情を浮かべて私に問う。
私は「相続分を第三者に決めてもらう形にすると、後で必ずトラブルになります」と続ける。

さらに「最終的に決定する人物の価値観や判断が達也さんそしてお子さんたちの納得を得られるとは限らないからです」と、必死に説明する。

「達也さんご自身で割合を決める方が、後々の争いは防げます。」

分かってくれ、そう思いながら私は説明を続けた。

しかし……、達也さんは首を横に振った。

「兄は昔から公平な人です。兄に任せれば大丈夫です」

最終的に達也さんは学さんに全てを委ねる決断をした。

正直、私としても思うところはあった。だが私はあくまでも行政書士だ。クライアントの意向にはなるべく沿わなければならない。

「分かりました。ただ、本当にお勧めできないので、気が変わった時にはすぐ作り直しましょう」

そう前置きをしたうえで私は遺言書を作成した。

そして数年後……、達也さんは遺言書を作り直すことなく亡くなったのだった。

●達也さんの優柔不断な遺言書が、親族間にバトルを巻き起こす……。後編【「家を継ぐのは長男」「女はこれで我慢しろ」…時代錯誤で不公平な相続にキレた妹が行政書士に放った「暴言」】で不公平な相続の内容が明らかに。

※プライバシー保護のため、事例内容に一部変更を加えています。