<前編のあらすじ>

慎一さん(仮名・54歳)は45歳の時にくも膜下出血で倒れ、手足のまひや高次脳機能障害が残り、障害等級1級の年金を受給しながら生活していました。47歳で退職後は、妻の雅美さん(仮名・56歳)と息子2人に支えられながら日常的な介助を必要とする日々を送ります。

しかし慎一さんは54歳で他界。雅美さんは夫との思い出を振り返りながらも、これからの生活への不安を抱えます。介護で働く時間も制約され、家計は苦しくなっていました。

遺族年金について知った雅美さんは「夫は会社も辞めちゃって随分経つし、辞めてから年金の保険料もずっと払っていなかったけど、遺族年金は受けられるのかな」と心配しながら年金事務所を訪ねると、職員から「遺族厚生年金が支給されます」と告げられます。

●前編:【障害年金受給者の夫が他界、保険料は7年間未納?「遺族年金は受けられるのかな」苦しい家計を抱える56歳妻が直面した老後不安】

なぜ保険料未納でも遺族年金が支給されるのか

会社員等厚生年金に加入していた人が亡くなると、その配偶者に遺族厚生年金が支給されることになります。遺族厚生年金を受給するためには、亡くなった人の要件があります。亡くなった人が死亡当時、次の①②③④のいずれかを満たす必要があります。

①厚生年金被保険者であること
②厚生年金被保険者だった場合で当該被保険者期間中に死亡原因となる傷病の初診日があって初診日から5年以内の死亡であること
③障害等級1級あるいは2級の障害厚生年金の受給権者であること
④老齢厚生年金の受給資格期間等(※25年以上必要)を満たしていること

①②については死亡日の前日時点での保険料納付要件があり、死亡日の前々日までの国民年金被保険者期間で、次のA・Bのいずれかを満たす必要があります。

A.保険料の納付と免除が3分の2以上あること
B.直近1年間に未納期間がないこと(亡くなった人が死亡当時65歳未満であることが条件。2036年3月31日までの時限措置)

慎一さんは1級の障害厚生年金受給権者で③の要件を満たしていることから、雅美さんは遺族厚生年金を受給できるようになります。慎一さんは退職後7年間、ずっと保険料を納めていませんでした。しかし、③の要件は、①②のA・Bのような保険料納付要件がありません。また、そもそも慎一さんは1級の障害年金を受給していたことから、退職後に国民年金保険料を納める期間については、保険料が免除され、納付しなくてもよいことになっています。そのため、在職中と退職後の期間だけで見ても④の要件も満たせることになっています(保険料の納付期間・免除期間の受給資格期間で合計約30年)。