「夫さえいなければ幸せに暮らせる」
筆者は、ファイナンシャルプランナー兼夫婦問題診断士として、離婚を迷っている人のライフプラン相談を多く受けていますが、このように目の前の苦しさから逃れたい気持ちを優先し、「離婚さえできれば幸せになれる」と考えてしまう人は少なくありません。
しかし、離婚しても「お金」がなければ、その後の生活は想像以上に厳しいものになります。筆者の親戚である典夫さん(仮名・50歳)は、まさに親の離婚の影響を強く受けた子どもの1人でした。どうして貧困に陥ったのか、そして、貧困を避ける方法はなかったのか――子連れ離婚を少しでも検討している人が、離婚前に考えるべきことや心構えなどをお伝えします。
大地主の父か駄菓子屋の母か? 11歳で直面した究極の選択
典夫さんの母・菊美さんが離婚したのは、典夫さんが11歳の頃でした。原因は典夫さんの父親のひどい浮気癖です。菊美さんも父親も既に他界しているため、離婚の状況や夫婦間の詳細については分かりませんが、典夫さんの記憶によると、離婚後まもなく、典夫さんは、妹と一緒に父親の家で暮らしていたそうです。父親は、山や田をたくさん保有する大地主で、父親との生活においては、典夫さんは比較的裕福な暮らしをしていたそうです。
ところが、ある夜、菊美さんの代理人と名乗る人が父親の家にやってきて、典夫さんと妹を引き取りに来ました。父親は子を渡すまいと、寝ていた兄妹を起こし2人に「裏口から逃げろ、逃げろ」と山に逃したそうです。
典夫さんは、こんな夜中に子を家から出すなんて「なんてひどい親だ」と思ったことを覚えていると言います。母に引き渡されないように兄妹を逃した父親ですが、小学生の子どもたちが行くあてはなく、結局、典夫さんたちは母の菊美さんの実家に行ったそうです。
