新課長への不満が募る

博巳は小さく息を吐き、枝里子に話すことにした。

「……秋の人事異動で課長が変わったんだ。岡田って人なんだがな。どうも俺はそいつと馬が合わなくてさ」

「嫌味な人ってこと?」

博巳は首を横に振った。

「そういうやつは、今までにもたくさんいたよ。もちろん好きじゃないが仕事だからと割り切れる。俺が苦手なのは仕事が遅くて八方美人なところだよ。良いやつなのかもしれない。実際に他の社員たちからは好かれているからな。でも会社は仲良しクラブじゃないんだ。好き嫌いじゃなくて仕事ができるかどうかで判断するべきだ。俺は嫌な奴だとしても仕事ができればそれでいいと思ってるからな」

「へえ、新しい課長さんはあんまり仕事ができないんだ」

博巳は唸ったあとで曖昧に首をかしげる。

「できないというか遅いんだ。この前だって備品を購入するときに何を買うか会議をしたんだ。色んな案が出るのは当然だ。最終的には課長が決めればいいのに、いつまで経っても決断をせず、皆はどうしたいのかって話を聞いてたんだ。皆が納得するものにしようとか言ってたが、そんなのは無理だよ。それぞれの考え方があるんだから。なのに部下の顔色を伺って全然決めようとしない。ああいう人間が上に立つと仕事がどんどん後回しだ。あいつは自分がどれだけ悪影響を与えているか分からないんだ」

1度話し出してしまうと不満がよどみなく漏れ出てくる。博巳は枝里子に愚痴を言い続け、枝里子はそれを頷きながら聞いていた。