疑いはさらに確信へ
ある日、いつものように買い物をしてから義実家に向かうと、いつもついているテレビがついていなかった。
「お義母さーん」
珍しいなと思った益実がリビングへ向かうも姿はない。どこに行ったのだろうかと小さな胸騒ぎを感じていると、寝室のほうから益美を呼ぶ声が聞こえた。
「益実さん、大変よ!」
益美が向かうと床やベッドの上にものが散乱していて、棚の引き出しが開けっぱなしになっている。まるで泥棒が入ったようだったが、りつの様子を見れば誰が引き出しのなかをひっくり返したのかは一目瞭然だった。
「ど、どうしたんですか⁉」
「お財布がね、どこにもないの! きっと泥棒に入られたんだわ! だから今すぐに警察を呼ばないと!」
慌てているりつを益実は宥める。
「ちょっと待って下さい。寝室がこうなったのは誰がやったんですか?」
「私よ! 財布がなくなってて探してるんだけど……。ああきっと泥棒が持って行ったんだわ……。病院の診察券とかお金とか入ってたのに……」
目を左右に動かして狼狽しているりつに益実は声をかける。
「と、とりあえず落ち着いて探しましょう。警察とかはその後で」
「どうしてよ! 私がないって言ってるの! これだけ探したんだから泥棒に決まってるでしょ!」
りつは益実を怒鳴りつけた。益美は心臓が握りしめられたような衝撃を覚えた。今までこんな風に尖った感情をあらわにしたりつを、見たことがなかった。
「と、とにかく待っててください」
そう言って益実はリビングに戻り、リビングに置かれた小さな棚の引き出しを開ける。やはりそこに財布はあった。いつもここに入れていることをりつは忘れていたのだ。
益実がりつに財布を渡すと、りつはさっきまでの騒動を忘れたように頬をほころばせている。中身を笑って確認しているりつを見て益実は戦慄していた。そこにいるのは益実の知らないりつだったからだ。