近年は家庭内でのネグレクト(育児放棄や児童虐待)が増加し、何の罪もない幼児が命を落とすケースも散見されます。ネグレクトは育児経験が少ない若い親世代や、親自身の生活が苦しい貧困世帯、1人親世帯などに起こりやすいと分析されていますが、親が精神的な問題を抱えるケースもあり、“家族の問題”として表に出てこないケースも多いようです。

袴田瞬さん(仮名)の場合はまさにそれでした。袴田さんは昨年、ネグレクトになった妻に1000万円の慰謝料を払って離婚、当時4歳だった長男を引き取ってシンパパ(シングルファーザー)生活を送っています。

袴田さんは現在も年収1500万円を超える“高級取り”ですが、一般的な慰謝料の相場は数百万円と言われますから、破格の金額です。しかし、袴田さんは「妻に慰謝料を払って離婚し、息子を引き取ったことには1ミリの後悔もない」と言います。袴田さんを離婚に踏み切らせた驚きの背景について聞きました。

〈袴田瞬さんプロフィール〉

東京都在住
42歳
男性
会社員
5歳の長男と2人暮らし
金融資産4500万円

自宅に義妹のいる光景が日常に

ほんの1年ほど前の話です。

残業を最小限に抑えて帰宅すると、時計の針は既に20時を回っていました。リビングからは保育園児の息子・樹の楽しそうな笑い声が聞こえてきます。義妹の彰乃ちゃんが樹に絵本の読み聞かせをしてくれているのです。

「樹はそろそろお休みなさいの時間だろ? 彰乃ちゃんに甘えてばっかりじゃだめだぞ」

やんわりと注意をすると、樹が「パパうざい」と口を尖らせます。

「佳乃は?」と尋ねると、「プレゼンの資料、明日提出だって部屋に籠もってます」

妻の佳乃は完全なネグレクト状態にあり、樹が2歳の頃から彰乃ちゃんが面倒を見に我が家まで通ってくれるようになっていました。