年金事務所で突然聞かれた大学時代のこと
年金事務所の窓口の職員から「ペースメーカーを装着すると障害等級3級相当になりそうです。初めて病院に行った日、つまり初診日は救急搬送された2024年10月ですね。初診日時点で厚生年金に加入していますから3級の障害厚生年金の対象になる見込みです」と説明されます。初診日時点で厚生年金に未加入だった場合は障害厚生年金の対象になりません。毅さんは「法人化して厚生年金に入っておいてよかったな」と感じます。
しかし、「ただ、障害厚生年金の受給には保険料の納付要件があります。保険料の未納が多いと障害等級に該当しても障害厚生年金は受け取れないことになります」と、職員から保険料納付要件の説明をされます。
これを聞いて毅さんは「個人事業主で第1号被保険者の時、国民年金保険料を払っていない時期が結構ありました。法人化・厚生年金加入前の2024年3月までもしばらく未納の期間があって……」と伝えます。確かに毅さんの記録には保険料の未納期間も目立ちます。「未納が多いしダメかもしれない」と不安に思う毅さん。
すると職員は毅さんが納付要件を満たしているかどうかの確認作業を始め、「20歳になった1987年9月から1990年3月まで国民年金に入っていなかったようですね。大学生でしたか?」と毅さんに尋ねます。毅さんは「そうなんです、大学生でした。そういえば、この頃も保険料を払ってなかったんです。学生時代もちゃんと払っておけばよかったのでしょうか……」と漏らします。さらに職員から「昼間部の大学だったということでよろしいですか?」と確認され、毅さんは「えぇ、そうですけど……」と答えます。
職員は「それでは、通っていた大学で大学時代の在籍証明書を取り寄せてください」と伝えます。「大学時代の? 在籍証明書?」と突然の案内に毅さんは疑問が生じます。職員は「ご用意いただくのは卒業証書ではないですよ。在籍期間のわかる在籍証明書です」と付け加えます。
障害年金の相談で、三十数年も前の大学時代の在籍証明書を持ってくるように言われた毅さん。障害年金の請求になぜ必要なのでしょうか。そして、毅さんは障害年金を受給できるのでしょうか。
●障害年金の請求に大学時代の証明書が必要な理由とは? 意外な救済制度の仕組みを、後編【「大学時代の在籍証明書」が障害年金受給につながる⁉ 保険料未納期間のある58歳男性を救った年金制度上のルール】で詳しくお伝えします。
※プライバシー保護のため、事例内容に一部変更を加えています。