過剰な節約志向でクーラーをつけていなかった

父を遠ざけていた時間は、父を知らない人間に変えてしまったのかもしれないと思った。

そんな気まずさを誤魔化すように、瑛美は声を張った。病室だったが構わなかった。

「もう、何してるのよ……⁉」

「わざわざ来なくても良かったのに」

「倒れたって聞いたんだから来るに決まってるでしょ」

茂人は口を真一文字に結ぶ。

「熱中症なんだって? 救急隊員の人が部屋が凄い熱気だったって言ってたけどクーラーつけてなかったの?」

「そんなものをつけるわけないだろ。電気代がいくらかかると思ってるんだ」

茂人の返事に瑛美は呆れる。

「あのね、節約は悪いことじゃないけど今時クーラーつけないなんてありえないよ。熱中症は本当に危ないんだから。節約って言って、こうやって倒れてたら意味ないでしょ」

瑛美の注意に茂人は黙ってしまった。そんな茂人を見て瑛美はため息をついた。