家族会議の結果は……

夕方、夫が帰ってきたのを合図に、めぐみは声をかけた。

「ちょっと話そうか。3人で」

リビングのテーブルに家族が集まるのは、随分久しぶりな気がした。

普段は食事の時間帯もバラバラ。各々がスマホやテレビを見ながら作り置きの料理を口に運ぶのが常だった。だが今日は違う。

「お父さんとも話したんだけど、蓮のスマホやお金の使い方、いくつかルールを決めておきたいと思って」

蓮は少し緊張した面持ちで、めぐみと夫を交互に見た。

「まず、夜10時以降はスマホは禁止。そもそも寝る時間だからね」

「……うん」

「それから、課金。基本的にはしてほしくないけど、自分のお小遣いの範囲内ならOK」

めぐみの言葉に、夫も大きくうなづいた。

「勝手にカードを使うのはダメだぞ」

「……わかってる」

蓮は、肩をすくめながら返事をした。

「あともうひとつ。これ、お母さんからのお願いだけど……宿題以外の勉強してくれるとありがたいなって。あくまで希望だけどね」

気まずそうに苦笑いする蓮。一応、勉強しなければという意識はあったらしい。

「……やってるよ。さっきもドリルやってたし」

「知ってる。だから、ちょっとだけ期待してるの」

「ちょっとかよ」

「うん、ちょっとだけね」

めぐみが冗談めかして言うと、夫が口元を緩めながら付け加えた。

「無理する必要はないけど、ゲームも勉強も、バランスだな。大人だってそうだ。お父さんだって仕事ばっかりじゃ嫌になるから、たまに釣りとかしたいし」

「じゃあ、おれも……勉強の息抜きにゲームするのはアリ?」

「もちろん。でも、その息抜きがメインにならないようにしないとな」

釘を刺されて少し残念そうにする蓮がおかしくて、めぐみは思わず吹き出した。
その夜、家族3人で囲んだ夕食は、いつもより新鮮な味がした。