「うちの親が亡くなったせいで事故物件に……?」
突然の連絡にそう声を詰まらせたのは、私の元に相談に訪れた50代の女性、里見さん(仮名)だった。
近年、賃貸物件における一人暮らしの高齢者が急増しており、そのままそこで亡くなることも珍しくはなくなった。そんな状況が続いているからだろうか、親が亡くなったことでアパートが事故物件化して損害賠償の請求を受ける人がポツポツと現れている。
今回は大家から突然の連絡を受け、激動の事件に巻き込まれた里見さんの話をしよう。
一人暮らしの母が突然迎えた最期
里見さんの母親は都内の小さなアパートで一人暮らしをしていた。年齢は88歳。元気ではあったものの年齢が年齢だけに、里見さんも定期的に様子を見に行っていたという。頻度でいえば2~3日に一度会う程度で、亡くなる直前の母親の様子について彼女はこう語っている。
「最後に会ったのは亡くなる前の日で、特に変わった様子はなかったんです。でも、次の日の朝に電話しても出なかったので、不安になって見に行ったら……」
母親の死は突然やってきた。彼女が母親の自宅に駆け付けアパートの扉を開けると、布団の中で眠るように母親は横たわっていた。
驚いて警察と救急を呼んだが、部屋の様子などから事件性はないと判断された。極めて平穏に事態は収まった。
亡くなったのも発見からそう遠くない時刻、おそらく前日夜から当日の朝にかけてだろうとのことであった。