息子の変化
そして、部活の代わりに始めたのが、アルバイトと野球部ではない友人たちとの遊び。
連日、夜遅くに帰ってきたり、休日も午前中から家にいなかったり。
親として不安に思うこともあるが、ちゃんと朝は起きて学校へ行くし、勉強もそれなりにやっている。だからこそ、佳代は注意する理由を探すように、息子を観察してしまう。
放っておくべきなのか、声をかけるべきなのか分からない。
三姉妹の長女として育った佳代は、弟や兄がいる家庭の「男の子」という生き物に、縁がなかった。そのせいか自分の息子であるはずの淳也のことが、とても遠く感じてしまう。
「うざい」と思われたくなくて、あまり詮索しないようにしてきた。しかし高3は進路の選択も控えている。今、彼が何を考え、何を思い、何を目指して歩こうとしているのかが分からなかった。
朝食の食器を片づけながら、佳代はふと、リビングの棚にある写真立てに目を向けた。
そこには、少年野球のユニフォームを着て、泥だらけになった淳也の姿がある。写
真の中の男の子は、佳代のよく知っている「優しい淳也」だった。
「変わっちゃったな……」
つぶやいた声が、キッチンの壁に静かに響く。
どうすればいいのだろう。
どうすれば、もう一度、ちゃんと話ができるのだろう。
いくら食器やシンクを綺麗に磨いても、佳代の胸の中にはもやもやとした霧のようなものが居座り続けていた。