ドルは弱かったでは円は

では、今週は円が強かったのかについても考えてみたいと思います。まず、今週の主要通貨の対ドル変化率をまとめてみました。

出所:内田氏

今週は6通貨全てがドルに対して上がっています。つまり米国ドル自体は弱かったようです。図の各通貨の下に書いてある数字は、ドル指数を計算するときに、その通貨が何%の重みでその値動きが計算されているかということを示すものです。

繰り返しですが、ドル指数の57.6%はユーロで構成されています。そのため、極端に言えばドル指数というのは、ユーロドルの裏返しということにもなります。そのユーロがドイツの長期金利の急騰を受け、今週ドルに対して4%上昇しているわけです。

やはりユーロの急上昇がドルを間接的に押し下げた、と考えられます。

次に、ドルも含めた7通貨の中で日本円はどこに位置しているのかを見てみましょう。

今週は147円台までドル安円高になりました。ですから、円は非常に強かったように感じるかもしれません。しかし、図において円は左から2番目に位置しています。つまり今週の円はドルを含む7通貨の中では下からは3番目に過ぎません。

もちろんドル円だけをみれば今週は147円台までドル安円高が進んだことにはなります。しかし、為替市場で円がすごく強かったかというと必ずしもそうではありません。

実際に改めて米ドル以外の通貨と日本円のペア、つまりクロス円を見てみますと米ドルが今週は一番弱く、日本円もかなり下の位置にいます。つまり、他の通貨が強かったということになります。

図でもまとめましたが、ドルと円がどちらも弱いと、クロス円(他通貨)と円の強弱が開く結果、他通貨高円安方向に動きやすくなります。ドルと円がどちらも弱いとクロス円は上がりやすくなるという点は、ぜひ覚えていただきたいなと思います。

実際、他通貨と円の動向を振り返っておきますと、今週はユーロ円とポンド円のどちらも円安になっています。

出所:内田氏

さきほど「ドル円が147円台になった、ドル安円高は間違いではない、けれど」ということでご説明したのはまさにこの点です。今週は「まさに円高」の相場、つまり円の全面高と言うわけではなく、他通貨に対して円は必ずしも強かったわけではなかったのです。

むしろ他通貨の方が強くて、相手の通貨によっては円安になった。これが今週のここまでの動きということになります。後編ではこの後(配信3月7日時点)発表となる米国雇用統計を踏まえ、来週の注目点をお話ししたいと思います。

ユーロに押されたとはいえ、ドルは少し軟調に推移してきています。ここで雇用統計がもし予想よりも弱いと、ドル円についても、ドル安方向に動いてしまう可能性もあるかもしれません。

少々緊張感のある雇用統計になるのではないかと感じています。

 

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後編:【経済指標からは米経済の底堅さが読み取れるも、米国CPIが弱かったワケ。トランプ関税連発が市場に与える影響も徹底解説】では、3月7日発表の米国雇用統計をもとにした分析や3月10日週の注目ポイントについて解説します。

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