老後資金準備の手段の一つとして注目されるiDeCo(イデコ、個人型確定拠出年金)だが、実際の平均掛金額は上限を大幅に下回っている。月5000円という最低額でも一定の運用益を期待できる可能性があるとされているiDeCo。なぜ多くの人が上限まで活用していないのか、そして少額からでも始める価値があるのかを詳しく解説する。
●前編「法改正でいくら増える?iDeCo(個人型確定拠出年金)の掛金、気になる今後は?」
実際の平均掛金額は上限より低めの傾向
iDeCoの掛金上限は職業によって異なるが、実際に人々はどのくらいの金額を積み立てているのだろうか?2025年4月時点のデータによると、iDeCo加入者の平均掛金は以下のようになっている(iDeCo(個人型確定拠出年金)の加入等の概況)。
◆職業別 iDeCoの平均掛金(月額)
・自営業者 :月2万7601円(上限月6万8000円)
・会社員(企業年金なし):月1万6637円(上限月2万3000円)
・会社員(企業年金あり):月1万3319円(上限月2万円)
・公務員 :月1万3716円(上限月2万円)
・専業主婦(夫) :月1万4354円(上限月2万3000円)
自営業者の場合、上限額が月6万8000円と最も高いにもかかわらず、実際の平均掛金は約2万7000円と上限の半分にも満たない。これは、60歳まで原則として引き出せないiDeCoの特性を考慮し、無理のない範囲で掛金を設定している結果と考えられる。
会社員や公務員は月1万3000円から1万6000円程度と、安定した収入がある人は積極的に掛金を拠出する傾向にあり、iDeCoの節税効果を理解して活用していることがうかがえる。
最低掛金の月5000円でも長期的には期待できる?
iDeCoは月5000円から1000円単位で掛金を設定できるが、「月5000円で積立を始めても意味がないのでは?」と思う人もいるだろう。実際はどうなのだろうか?シミュレーションしてみよう。
iDeCoで投資信託に積立投資を行い、利回り4%で運用できた場合で考えてみる。毎月5000円を10年間積み立てると、元本は60万円。利回り4%で運用できると利益は約13万6000円となり、合計約73万6000円になる。
これが20年間になると、元本120万円に対して運用益は約63万4000円、合計で約183万4000円。30年間では、元本180万に対して運用益は約167万円となり、合計約347万円にまで膨らむ。
通常の投資では利益に対して約20%の税金がかかるため、先述した30年間運用した場合の運用益167万円に対しては約33万4000円が税金として引かれることになるが、iDeCoでは非課税となる。これはあくまでシミュレーションであり実際の結果を約束するものではないが、iDeCoで月5000円の掛金設定でも長期に積立を行うことで一定の成果を期待できると言えるだろう。
iDeCoは少額からでも活用する価値はある
iDeCoの掛金は、上限額いっぱいまで拠出する必要はない。自分の家計状況に合わせて、無理のない範囲で始めることが大切だ。月5000円という最低額からでも、長期間続けることで複利効果と税制優遇により、老後資金を形成していくことに期待できる。
掛金は多ければ多いほど運用益も大きくなる可能性があるが損失が生まれる場合もあるうえ、iDeCoは原則60歳まで引き出せないことを考慮すると、家計を圧迫するような金額設定は避けるべきだ。
また、iDeCoの掛金は年に1回変更することができる。ライフステージの変化や収入の増減に合わせて、掛金を見直すことも可能だ(掛金の拠出を停止することも可能)。まずは少額から始めて、生活に余裕ができたら徐々に増やしていくという方法も賢明だろう。
iDeCoは老後資金を準備するための強力なツールだが、その効果を最大限に発揮するためには、自分に合った掛金設定と長期的な視点が欠かせない。職業や家庭の状況に応じて、自分に最適なiDeCoの活用法を考えてみてはいかがだろうか。