<前編のあらすじ>
夫の良一さん(仮名、以下同)は65歳、妻の由美子さんは62歳です。良一さんは大学卒業以来、勤務し続けた会社を65歳で退職しました。65歳から老齢基礎年金と老齢厚生年金を受給しており、加給年金も年間40万円程度加算されています。
由美子さんは結婚を機に退職し、専業主婦を続けていましたが、家計を支えるために再び働き始め、現在は厚生年金に加入中です。
良一さんは「加給年金、年間40万円って大きいよな。これは助かる」とそのありがたさを感じています。しかし、由美子の厚生年金加入期間が20年になると、加給年金はなくなってしまうのかが気になり、年金事務所で相談してみることにしました。
●前編:【まさか年間40万円の加給年金がストップ⁉ 老後のために継続勤務を決めた60代の妻…高齢夫婦が抱いた「最大の疑問」とは】
退職時改定と「厚生年金加入20年」の意味
年金事務所の職員によると、特老厚を受け取れるようになる、63歳当時の由美子さんの厚生年金加入期間は合計235月(19年7カ月)となります。
良一さんの加給年金の加算は、由美子さんの特老厚が240月以上の厚生年金加入期間で計算されて支給されると、なくなるルールとなっています。ですが、63歳になってからあと5カ月勤務して厚生年金に加入すれば、合計の加入期間が240月になるものの、その時点で良一さんの加給年金は加算されなくなってしまうのかというと、そうではありません。
年金額の計算にはルールがあります。年金額はまず、受給できるようになった時点での月数で計算されます。由美子さんの場合は63歳時点で受給できるようになり、その時点での厚生年金加入期間は235月。よって、特老厚は235月で計算されることになります。そして、その後引き続き厚生年金に加入し続けた場合、その掛けた厚生年金保険料は掛け捨てにならず、受給額に反映されます。
ただし、毎月厚生年金に加入してもその掛けた分の年金が毎月増えるわけではありません。63歳~65歳までの2年間の特老厚は、退職したタイミングで再計算を行います。これは「退職時改定」と言われるものです。
63歳以降5カ月勤務して厚生年金に加入し、現実には240月加入となっても退職していなければ、引き続き235月で特老厚が計算されたままとなります。つまり、その場合、由美子さんの特老厚は240月未満で計算されているため、良一さんの加給年金は引き続き加算されることになります。