東芝マテリアルを1500億円で買収 非内燃への強化は進むか
最後に日本特殊陶業が進める事業ポートフォリオの転換を紹介します。同社は非内燃機関事業の比重を高めていく方針です。
日本特殊陶業の主力製品である自動車用プラグは、エンジンといった内燃機関に用いられるものです。2020年は収益の82%を内燃機関事業が占めていました。
しかし自動車は電動化が進むとの想定から、プラグは需要の減少が見込まれています。日本特殊陶業は、内燃機関向け製品は2030年代半ばをピークに減少すると分析します。これに対応するため、非内燃機関事業の比率を2030年に40%、2040年には60%へ高めることを目指しています。
これに貢献するとみられるのが東芝マテリアルの買収です。日本特殊陶業は2024年11月、東芝マテリアルの全株式を取得すると発表しました。取得価額は、ネット有利子負債を含め1500億円を予定しています。
東芝マテリアルはファインセラミックスなどの部材メーカーです。特にベアリング向けのセラミックスボールに強みがあり、世界シェアの約50%を握ります。セラミックスボールを用いたベアリングは、電動自動車のモーターの軸受けにも採用されます。
東芝マテリアルは、日本特殊陶業が注力領域として掲げる「環境・エネルギー」と「モビリティ」、「医療」と「情報通信」でも技術を有します。連結すればシナジーが期待されるでしょう。
現状のところ、非内燃機関事業の強化は道半ばです。2024年3月期の収益は1091億円と、当面の目標である1500億円(2025年3月期)には開きがあります。とは言え、2025年3月期に最終年度を迎える中期経営計画の目標値を1年前倒しで達成している日本特殊陶業。東芝マテリアルの子会社化で事業ポートフォリオの転換に弾みをつける狙いです。株式の譲渡は2025年5月末を予定しています。
文/若山卓也(わかやまFPサービス)