――33th birthday♥ 今日は家族みんなでディナー。思ってた33歳とは違うけど、家族をはじめ関わってくれる大切なみんなに感謝のきもちを忘れず、有意義な1年にしたいです!

優等生なキャプションが添えられた写真に写る妹は、丈の短いワンピースドレスを身にまとい、背後にさりげなく夜景の見える港区のタワーマンションのリビングでソファに腰かけて、手にはワイングラスを持ち、ひざの上にはハートのスタンプで顔の隠れた5歳になったまな娘の舞亜を座らせている。たぶん写真を撮ったのは、アパレルショップを経営している旦那だろう。

美緒は姉としての義理だけで親指を動かし、いいねを押してスマホを置いた。スマホから上げた視界には、殺風景で少し薄暗い、どこにでもある7.5畳のワンルームマンションの一室が映っている。

毎年、夏の終わるこの時期になると、昔を思い出して少し気分が落ち込んだ。

1つ年下の妹、詩織との誕生日は10日違いだ。小さいころから何でも要領よくこなし、きれいで明るく人気者だった詩織の誕生日には、いつも家でパーティーが開かれ、詩織はたくさんの友達とたくさんのプレゼントに囲まれて、この世界に生を受けたことを祝われた。

だからこそ、その10日後にやってくる自分の誕生日の惨めさが際立った。祝ってくれる友達は片手で数えても指のほうが余るほどで、盛大なパーティーが開かれることはない。両親は祝ってくれるが、やはり本番は大勢が家にやってくる詩織のパーティーで、美緒の誕生日はその惰性やおまけのようなささやかさだった。

今年だって同じだ。両親くらいは連絡をしてくるだろうけれど、美緒の誕生日を祝ってくれる相手はおらず、当然のように予定もない。

思わず吐き出したため息は、よどんだ部屋のなかでいつまでも漂っていた。