SNSのやりとりが契約書代わりになるケースも

「まずメモ書きでも録音でもいいです。契約の内容を取り決めた履歴のようなものはありますか?」と廣田さんに問う。それに対して彼は「SNSのメッセージ機能がありまして、そのやりとりであれば……」と答える。

一般的に契約は口頭でも成立するため契約書なぞなくとも契約は有効だ。お金の受け渡しもあり、金の貸し借りという契約は完全に成立している。

だが、口頭のやりとりとお金の受け渡しだけでは証拠がない。「言った」「言ってない」と当事者間の水掛け論で終わらない言い争いが生まれるだけだ。裁判しようにもそれだけではこちらが勝つ見込みはなく、現実的ではない。

そこで活用したいのがメモ書きやSNSでのやりとりの履歴だ。契約書のように形式的な記載方法でなくとも、実印での押印がなくとも、契約の成立は証明できることはある。

もちろん絶対ではないが、裁判の場であってもそれらを証拠として契約書のように利用できることも珍しくはない。

具体的には、当事者である双方が合意した旨や、受け渡すお金の額、あくまでもお金の貸し借りであることなどが明記されていればよい。

早速彼のスマホを借りてSNSでのやりとりを確認すると、お金の額や貸し借りした事実などが確認できた。また、そのSNSでのやりとりが契約書の代わりとなる証拠として利用できることを廣田さんに伝えた。

そして、急ぎ内容証明郵便を作成して送付、近藤さんへ返済を求めることとなった。

その後の廣田さんは…

その後、近藤さんは内容証明郵便の内容を受けてSNSでの記載内容を事実として認め、借りたお金である250万円全額を一括返済した。契約の証明として契約書がなくとも、SNSやメールでのやりとりでも十分に代用できた結果となった。

廣田さんは言う。「SNSでも代用できるなんて知らなかったです。もうお金の貸し借りは懲り懲りですが、万が一同じようなことがあれば今後もしっかり証拠を残したいと思います」。

お金の貸し借りは長年培った信頼関係も一瞬で崩壊させてしまう。

お金の貸し借りをするなら契約書は絶対、という意見もあるが友人や親族が相手だとそうもいかないことが多い。契約書が作れない場合であったなら、せめて廣田さんのようにSNSであっても当事者間でやりとりした履歴を残しておくべきだろう。

※プライバシー保護のため、内容を一部脚色しています。