<前編のあらすじ>
廣田さん(仮名・男性)は新卒から有名企業に勤める28歳のエリート会社員で、同世代と比べて懐には余裕があった。
ある日、学生時代の友人である近藤さんから「300万円貸してほしい」との相談を受け、廣田さんは事業内容に勝算があると判断して250万円を貸すことに決めた。
しかし、1年後の期日を過ぎても近藤さんから返済はない。電話で話を聞いてみると、「事業がうまくいっていない」と返済の予定すらないようだった。廣田さんは不誠実な対応に怒りを覚え、友人や近藤さんの両親に連絡を取るも解決には至らなかった。
●前編:【エリート会社員が巻き込まれた金銭トラブル…人間関係の崩壊を招いた「1通のメッセージ」】
「親しい友人同士だから」甘い考えが招いた悲劇
これだけ世にお金を貸すなら契約書をしっかり作るべきという意見があふれている中、廣田さんが近藤さんにお金を貸し付ける際に契約書を作らなかったのはなぜか。これもよくあることだが、「親しい友人同士だからそこまでしなくても大丈夫だろう」という甘い考えが原因だ。
「俺たちは友達だし、もめることはない。たかが250万円だ」。お金の受け渡しの際、近藤さんが言ったというこの言葉も、貸す側の廣田さんからすれば「万が一がある」と考える。
しかし、友人から信頼を前面に押し出した言葉を先回りして言われてしまうと、多くの人はそれに流され、不安に思いながらも「契約書を作らなくてもいいか」と考えてしまう。まさに廣田さんと近藤さんもこれで、お金の貸し借りで失敗するたいていのパターンとなる。
信頼関係ありきでお金を貸してしまいその後返済がなされない。人からこの話を聞いたり、メディアで見聞きしたりしても、その時は自分には関係ないと思ってしまうが、本当によくある話なのだ。
それから半年後、廣田さんから私に相談が来た。「どうにか今から返済を受けられないか」というものだった。これまでの経緯を私は廣田さんから聞き、「理論上可能です」と回答し、理由を説明していく。