<前編のあらすじ>

麻耶さん(仮名・60歳)は、数年会社に勤めたあとに結婚し、その後は専業主婦として過ごしてきました。夫の雅史さん(仮名・63歳)と二人暮らしをする中で、年金制度に関心を持ち始めます。

主婦仲間の間でも年金の繰上げ受給がたびたび話題になる中、麻耶さんは繰上げによる減額率が0.5%から0.4%に引き下げられたことを知り、ちょうど60歳になった時に繰上げ受給することを決意しました。

ところが、繰上げ受給開始から6カ月後、雅史さんが心筋梗塞で突然亡くなってしまいます。麻耶さんが遺族厚生年金の相談のために年金事務所に行くと、職員から「遺族厚生年金の方が高いので、こちらを選択することになります」と説明を受けました。

●前編:【年金を早めに受け取り、元気なうちに楽しむはずが…60代主婦の老後計画を狂わせた「まさかの原因」】

65歳までと65歳以降の年金の受け取り方

既に老齢年金(老齢基礎年金・老齢厚生年金)を繰上げ受給していたところ、夫・雅史さんの死により、再び年金事務所に訪れることになった麻耶さん。遺族厚生年金の案内がされましたが、その際、窓口の職員から今後65歳までの年金と65歳以降の年金に分けて説明を受けました。

65歳までの年金はどうなる?

まず、雅史さんの死亡により、麻耶さんは遺族厚生年金を受けられることになりますが、こちらを受け取ると65歳までは繰り上げた老齢年金は支給停止になります。

年金事務所の職員は「65歳まで繰上げをした老齢年金と今回発生した遺族厚生年金はあわせて受給できません。どちらか選択になります」と説明します。

雅史さんが亡くなったことで遺族厚生年金120万円に中高齢寡婦加算(年間61万2000円)が加算されて合計180万円以上支給されることになりますが、これは麻耶さんが繰上げした老齢年金70万円弱より高い額です。よって、金額の高い遺族厚生年金を選択して受給します。その結果、60歳6カ月の麻耶さんは、せっかく繰上げした老齢年金をここから65歳まで受け取れないのです。

この点は、繰上げ請求時に窓口で説明はされていたのですが、当時麻耶さんは夫が他界するなど夢にも思っていなかったため、気にも留めていませんでした。

65歳以降の年金はどうなる?

続けて、65歳以降の年金の説明がされます。65歳になると遺族厚生年金から中高齢寡婦加算がなくなります。そして、減額された老齢基礎年金と老齢厚生年金、遺族厚生年金はあわせて受給できますが、遺族厚生年金については老齢厚生年金相当額(繰上げ減額後)を差し引かれて受給することになります。

このように65歳前と65歳以降で年金の内訳が大きく異なります。