「よっしゃー!」
優太の大声で水咲は目を開けた。時刻は深夜4時。テレビの大画面では柔道着を着た男が畳の上で拳を突きあげていた。
「すげー! 金メダルだ、すげーな!」
優太は興奮した表情でテレビに向かって叫んでいる。
テレビの中で行われていたのはオリンピックの男子柔道だ。パリと日本は7時間の時差があったが、優太の提案で一緒に日本代表を応援しようということになった。
深夜の4時を回り、うたた寝をしかけたところで決着がついたらしかった。
「スゴいね、良かったじゃない」
「ああ、やべーよ! 金メダルなんてさ!」
中継が終わったあと、優太は興奮冷めやらぬ様子でテレビで聞きかじったにわか知識を使って、水咲に柔道の解説をしてくる。水咲は適当な相づちを打ちながら、あくびをしていた。