週2日のランニングから

水咲たちは週2日、30分程度ののんびりしたランニングを始めた。最初は物足りなさそうにしていた優太だったが、

「ね、私の言うこと聞いておいてよかったでしょ?」

「いやぁ、ほんとに体力って落ちてるんだな」

優太は額の汗を拭う。ランニングを始める当初、優太は毎日1時間のランニングをしようと提案してきていたが、水咲は首を横に振った。

実は前回の、東京オリンピックのときも同じような一念発起があったのだが、そのときは翌日の筋肉痛がひどすぎて、けっきょく3日坊主になっていた。ダイエット目的の運動は続けることが何より大切だから、軽いメニューから始めるように水咲は提案した。優太はもっと本格的にやらないとと主張していたが、実際に30分走ってみると、自分の体力のなさをようやく自覚できたらしかった。

とはいえ、これまで何も運動していなかったからか、ランニングの効果はすぐに現れ始めた。

「ほら、水咲、これ見て?」

シャワーを浴びて夕食を取ったあと、優太は見慣れないジーンズ姿で水咲の前に立った。

「あれ、買ったの?」

「違うよ。2年前くらいに買ったお気に入りのやつなんだ。入らなくて諦めてたんだけど、着れるようになったんだよ!」

優太はうれしそうにジーンズを見せびらかしてくる。そんなうれしそうに笑う優太を水咲はほほ笑ましく見ていた。

しかしいいことばかりではなかった。ランニングをすることで、水咲自身の体重も落ちたのでうれしかったが、続けていくうちに新たに不安の種も生まれた。

優太ののめり込み方が異常なのだ。