<前編のあらすじ>

離婚時のトラブルとして度々話題になる養育費の未払い問題。今回紹介する晴美さんも夫の正平さんと養育費について大きくもめた。養育費として平均額より低い月3万円を希望した晴美さんに対し、正平さんは「月2万円が限度だ」と渋った。その後は半年ほどかかって養育費の額は3万円で合意に至った。

2人の離婚の原因は正平さんのお金の浪費癖だったこともあり、晴美さんは将来的に未払いが起きるのではないかと心配になった。そこで養育費の取り決めを公正証書で作成することを提案。公正証書が強力な契約書であること、改ざんや変造などが容易でないことを説明した。

すると正平さんは、「じゃあ、お前が金額を上げたいと考えても簡単には上げられないんだな?」と請求金額が一定という部分に納得したらしく、2人は公正証書を作成するに至った。

●前編:【浪費家で貯金ゼロの夫との離婚を決意…女性が‟養育費不払い対策”のためにした「とっておきの準備」】

離婚後半年で滞りだした養育費の支払い

離婚してから半年。案の定というべきか、養育費の支払いが滞りだした。

最初こそ支払いに遅れがあっても翌月上旬には支払いがあったので、晴美さんも目をつぶっていた。だがしかし、それが2カ月単位、3カ月単位と長くなってくるとさすがに我慢も限界に達する。

晴美さんは正平さんに対して裁判上での手続きを用いて強制執行することを決意した。後日、正平さんを呼び出しこう伝える。

「すぐに差し押さえ手続きをしてあなたのお金を差し押さえるから」

これに対して正平さんは必死に反論する。

「意味が分からない。俺は金がないんだぞ?」

そこで晴美さんは正平さんに1つひとつ丁寧に説明する。通常差し押さえをするには裁判で勝訴判決を得て、そこからの手続きとなるわけだが、公正証書にはそこをすっ飛ばしていきなり差し押さえが実行できることを正平さんにも分かるように説明した。

なぜ晴美さんがそのような説明をできるかと言えば、公正証書の作成にあたって私が用意した原案と説明を、晴美さんがしっかり理解していたからである。

公正証書の作成は公証役場という特殊な機関で行う必要がある。私が代理人となると専門家の関与がバレ、事がうまく運ばなくなる可能性がある。そこで、公正証書の作成は晴美さんと正平さんの2人で行ってもらった。その分、公正証書についての知識や作成の流れ、その後の対応についても一通り説明した経緯があった。

公正証書の作成は専門家が関与しなくても可能ではあるが、専門的な手続きである分、失敗したり後悔したりすることにもつながりかねない。そこで晴美さんは私にこっそり依頼をして来たというわけだ。