真奈の変化

それから間もなく高嶋の問題行為は、校長や教育委員会にも報告され、懲戒免職を受けることになった。

アレルギー症状が収まって元気になった真奈は問題なく学校に通っているが、修子は今まで以上に食事に気を遣うようになった。特に給食については、毎日真奈と一緒にその日の献立を確認し、どのおかずに何が含まれているのか丁寧に予習するほどの徹底ぶりだ。

そのかいあってか、真奈は自分のアレルギーだけでなく、食べもの全般にも興味を持つようになった。

そのうちのひとつが、修子のお菓子作りを手伝うことだ。

修子は最近になって、真奈が食べられるケーキを自分で作れるようビーガンスイーツの勉強を始めた。限られた材料では理想の味を実現するのが当然簡単ではない。しかし真奈と一緒にキッチンに立つ時間は、かけがえのない時間だ。

「ママ、早くレシピを完成させないとパパのおなかがはじけちゃう」

試食係を任されている大吾は、近頃ますますおなかが大きくなってきた。大吾のおなかをつつきながら真剣な顔で心配する真奈を見て、修子は思わず吹き出した。

修子につられて大吾も笑いだし、真奈も楽しそうに笑い声を上げた。

8歳の誕生日までには、真奈も食べられるおいしいケーキを完成させよう。アレルギーをハンディや生きづらさにしたくなかった。

3人分の笑い声に包まれたキッチンで、修子は改めて決意した。

複数の事例から着想を得たフィクションです。実在の人物や団体などとは関係ありません。