<前編のあらすじ>
由美穂(35歳)が嫁いだ大島家は、地方で工場経営をしている。20代のころは東京で働いていた夫も、30歳になったことを機に実家の後を継ぐことになった。由美穂も仕事を辞め、夫とともに義実家の仕事を手伝うことになった。
由美穂は家のために始めた経理の勉強が思いのほか面白くなり、仕事にもやりがいを感じながら手伝っていた。だが、義父の藤次(68歳)が由美穂に対して、夫がいないところで性的な発言やボディタッチを繰り返してくる。我慢ができなくなった由美穂は夫に報告し、夫がきつくしかったことで義父の言動は少しだけ大人しくなったが、間もなく病気にかかった義父はあっという間に他界してしまう。
不謹慎だが、義父から解放されたことに安堵する由美穂だった。
●前編:エスカレートする同居義父の仰天言動…嫁いだ先で直面した「距離感がおかしい義家族」
義母の本性
藤次が亡くなり、修司とともに工場を切り盛りしていこうと由美穂が決意を新たにした矢先だった。
なぜか愛子が仕事に口出しをするようになる。それまで全く工場経営に興味がなかったはずなのに、いきなり現場に出てくるようになり、あれやこれやと修司や従業員に命令をするようになったのだ。
そんな愛子の急変ぶりは当然、由美穂にも向けられる。
その日は、取引先で発注数のミスが発生し、管理データを書き換えないといけない事案が発生していた。たまにあるミスなのだが、経理の由美穂は遅くまで残って仕事をしないといけなかった。
疲れた体で家に戻ると、不満顔の愛子が待ち構えていた。
「今まで何をしていたの? もう19時を回っているんだけど。ご飯はどうするの? お風呂も沸かさないとダメなんじゃない?」
以前であれば、チクッとした嫌みくらいで終わっていたものを、最近の愛子ははっきりと敵意をむき出しにして言うようになった。
「あの、お義母(かあ)さん、家にいらっしゃるのなら、少しはご自分でやってもらってもいいですか? 私たちの分は別でいいですので……」
疲れから、いら立ちを隠せず由美穂は反論。すると、愛子は眉根をつり上げた。
「それはあんたの仕事でしょうが! なんで私がそんなことまでしないといけないのよ⁉ うちの稼ぎで飯を食ってるくせに、家事もしないなんて、甘えるものいい加減にしなさい!」
烈火のような怒りに由美穂は面食らった。稼いでいるのは、藤次や修司、そして由美穂たち従業員だった。愛子はただ家にいるだけで、何もしてない。なのにどうして自分が社長のようなことを言えるのだろうか。
由美穂は怒りよりも疑問を感じた。
「とにかくあんたは仕事も家事も全部、ちゃんとやるのよ! 嫁なんだから! 私にこんなこと言わせないでちょうだい!」
愛子はわざと足音を立てながらリビングに戻っていった。由美穂はため息をついて、玄関へ上がる。これが愛子の本性なのだろう。
厄介な義父ではあったが、彼の存在に守られていた部分もあったのかもしれないとすら、由美穂は感じていた。